一般拠出金は何のために労働保険料に含まれている?その疑問を社労士が分かりやすく解説
労働保険料には一般拠出金というものが含まれているのをご存知ですか?
この一般拠出金、実はとても大切なものなんです。
みなさんも『アスベスト』のことはご存知かと思いますが、このアスベストが原因で健康被害を被った労働者を救済するために一般拠出金は使われます。
このブログでは、一般拠出金を【誰が】【いくら】負担するのか?なぜ特別に使途が設けられているのか?といった基本の説明を、わかりやすくご紹介しています。
目次
一般拠出金とは?
まずはじめに、一般拠出金の概要について知っていきましょう。
一般拠出金とは、「石綿による健康被害の救済に関する法律」による定めを根拠に、石綿(アスベスト)による健康被害を被った方に対する救済の費用に充てるため、事業主が負担するものです。※全額事業主の負担
ここでいう事業主とは、 労災保険適用事業場の事業主を指しています。
また、一般拠出金と特別拠出金に区分されますが、それぞれ以下のような違いがあります。
一般拠出金
全国すべての事業主(※石綿には直接的な関係がない企業も含む)が負担する拠出金。
労災保険の保険関係が成立している事業の労災保険適用事業主であれば、徴収対象となります。
2007年4月1日から「一般拠出金」についての申告および納付が開始されました
特別拠出金
石綿との関係が特に深い事業を行っていて一定の条件に該当している事業主が一般拠出金とは別に負担する拠出金。特別拠出金の徴収対象となる事業主を「特別事業主」と呼びます。
一般拠出金と密接な関係にある「アスベスト」とは一体?
ここでは、適切にお伝えするため厚生労働省による説明をもとにご紹介しましょう。
厚生労働省のHPでは、以下のように説明されています。
石綿(アスベスト)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。
その繊維が極めて細いため、研磨機、切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹付け石綿などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が 吸入してしまうおそれがあります。
以前はビル等の建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていましたが、昭和50年に原則禁止されました。
その後も、スレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などで使用されましたが、現在では、原則として製造等が禁止されています。
石綿は、そこにあること自体が直ちに問題なのではなく、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。
予防についての記述もあるので、ぜひ一読してみましょう。
一般拠出金の金額は?
一般拠出金を算出するにあたっては賃金総額(千円未満切り捨て)に対して一般拠出金の「料率」を掛けます。
この料率には変遷があり、現在は業種を問わず、一律1,000分の0.02となりました。(2014年4月1日より変更。それまでは0.05でした。※参考:神奈川労働局HP)
いまいち費用感がイメージしづらいと思うので、具体的な数字で計算してみましょう。
例えば、対象年度中に賃金を総額1,000万円支払った企業があったとします。
この場合、1,000万円に対して0.02/1,000を掛けるので、算出される一般拠出金としては200円となります。
「案外安いな」と思われるかもしれませんが、前述の通り広く徴収されることによって、一企業あたりの負担を少なく抑えています。
また、労働保険料には労災を一定割合に抑えることによって「メリット対象事業場」として保険料に優遇がありますが、メリット対象事業場に該当する場合であっても、一般拠出金にはメリット料率の適用がありません。
おわりに
いかがでしょうか。
ニュースではまれに耳をすることがあるアスベストも、実はこんな形で労働保険料にも影響しています。
アスベストによる健康被害は深刻で、このように強制徴収によってフォローする必要があるのです。
事業主負担のため、労働者にとっては身近なものではないかもしれませんが、今回はぜひ知っておいてもらいたい知識としてのご紹介いたしました。
今回は労働保険に関するお話でしたが、社会保険適用拡大など、社会保険に関するテーマも扱っているのでぜひご覧ください。
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