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生活保護を返金することになるってホント?!障害年金との調整について社労士が解説!

生活保護を受給している方から障害年金の申請相談を受けた際に、「生活保護と障害年金は両方受け取ることができますか?」といったご質問をたびたび受けることがあります。

結論として両方を満額受け取ることはできず調整がかかるのですが、生活保護を受けている人にとっては、手元にいくら残るのかが気になるところだと思います。

また、過去にさかのぼって障害年金の受給権が発生した場合は、生活保護との調整も同様に過去分にさかのぼって発生します。

今回のブログでは、この複雑な「生活保護と障害年金」といった問題をテーマに、社労士が解説していきます。

生活保護を受けていて障害年金の申請を検討している方に、参考にしていただけると嬉しいです!

ぜひ最後までご覧ください。

目次

生活保護と障害年金は両方受け取れるのか?

生活保護を受給している方が障害年金の障害等級にしているなどの要件を満たして障害年金の受給権を得た場合、生活保護を受給したまま障害年金も受給すること(=両方を満額で受け取ること)は可能なのでしょうか?
冒頭でも少し触れた通り、この答えは【NO】です。
生活保護を受給している方が障害年金を受けられるようになると、障害年金に相当する額が生活保護かと実質相殺されてしまいます。
このロジックを理解するために、生活保護制度についてもう少し詳しく触れておきましょう。

生活保護について

生活保護は、憲法第25条で定められた「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」といった部分を保障するために設けられたセーフティネットとなる制度です。
(参考:厚生労働省HPから「生活保護制度」
上記の参考サイト内でも記述のある通り、「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方」が生活保護の対象となります。ここでいう「資産や能力“等すべて”」の中には年金や手当なども含むと解釈されており、つまり「他法優先」という考え方になります。
そのため、生活保護受給者が障害年金も受給できるようになった場合についても、他法(=ここでは障害年金)が優先されて扱われます。

生活保護の返金額はどのようにして決まる?

実際の計算は、障害年金の受給権を得ることで生活保護のほうにも障害者加算が発生するか否かなども考慮して考える必要がありますが、簡単に説明すると「生活保護費が障害年金の額を上回る場合、生活保護費と障害年金が重複する部分(つまり障害年金)をそのまま生活保護費の返還にあてる」ことになります。
障害年金の受給権を将来に向かって得るのであれば、今後受給する生活保護費に対して障害年金が調整されるのですが、過去にさかのぼって障害年金の受給権が発生した場合、生活保護費も過去にさかのぼって返金の必要が生じるケースがあります。

受け取れる総額が変わらないのなら、障害年金を受給する意味ってあるの?

生活保護費と障害年金の調整が起きた結果、手元に残る金額が実質的に変わらないとなると、障害年金をあえて受給する必要があるのか?と思うかもしれません。
けれども生活の自由度でみると生活保護から障害年金にシフトしていくことには大きなメリットがあります。
例えば生活保護費だけで生活を維持している場合、家族から遺産を相続すると財産を持っているとみなされて生活保護費の受給は打ち切りになってしまうことがあります。つまり財産を保有していないことが生活保護を得る前提条件なので、車や家を持つことも制限されます。
その他にも、生活保護費として受給したお金の使途を報告するなどの制限があり、もちろん貯金も認められません。
これに対して、障害年金を受給していても働いて収入を得ることに制限がありません。
障害年金を選択することで、生活保護よりも生活の自由度が高まるのではないでしょうか。

生活保護を受給していると、障害年金の申請を社労士に依頼すると損?!

見出しでは一般的な感情に寄せて「社労士に依頼すると損?!」と表現しましたが、この問題について、私は「損得」で語るべきではないと考えています。
障害年金の請求(申請)は、過去ブログ(申請チャンスを逃さない!障害年金の「あるある落とし穴」回避で受給を応援!)でもご紹介したように、ご自身での申請が可能です。ご自身で申請される際には年金事務所での相談も可能ですし、もちろん年金事務所では無料で対応してくれます。生活保護を受給されている方であれば、ケースワーカーに相談することで障害年金の請求にむけて力になってもらえることもあります。
そんな中であえて社労士への依頼を選択すると費用が発生することから、金額面だけを比べて「損」と受け取られる方もいらっしゃるかもしれません。
障害年金は要件に該当すれば受給できるはずのものなので「裏技」や「コツ」といった表現は適さないのですが、法律に則った制度ですので法律(年金法)に関する「知見」は障害年金を請求する際には重要な要素となると私は考えています。
その点で、年金の専門家である社労士へのご依頼は、費用に見合ったパフォーマンスはご期待いただけると自負しております。

おわりに

今回は生活保護と障害年金の調整について取り上げました。障害を抱える方の中には、どうしても十分な収入を得られる職業に就くことが難しい方も多くいらっしゃいます。
そんな中で、生活保護あるいは障害年金といった福祉の力を借りて生計を立てる必要がある方々にとって、互いの制度の関係や受給額の調整ルールは生活に直結する問題といえます。
しかしながらなかなか複雑な部分もあるためか制度理解が進んでいないのが現状です。
今回のブログで少しでも困っている方々の理解の促進に役立てていたら嬉しいです。

このブログでは、今回のような障害年金など個人の方に向けたテーマの他に、助成金や労務管理について扱った企業向けのテーマなど、幅広く扱っています。
週に1度を目安に更新しているので、またのぞいていただけると幸いです。

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