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精神障害者のための障害年金ガイド

精神的な健康課題に悩む方々へのサポートとして、障害年金の取得が一つの選択肢となります。このブログでは障害年金に関する理解を深め、正確かつ的確な情報を得るための手助けとなる情報を集約し、解説しています。

障害種別の中でも特に精神障害に焦点を当て、認定の対象となる病名や等級の違い、診断書の役割について詳しく掘り下げます。

障害年金のご相談でよく寄せられる障害者手帳との関連や、精神障害の中でも発達障害・知的障害を抱えておられるケースについても触れています。

網羅的にご紹介するのでボリュームのある記事ですが、目次からあなたが必要とする情報へショートカットも可能ですので、様々な方のお役に立てる記事になっています。

目次

精神障害と障害年金の基礎知識

精神障害を抱えている方の場合、思うように働けず生活が困窮してしまうことが少なくありません。
また、そういった状態が長期化することもあり、経済状況に対する不安がさらに病状の悪化を加速させてしまうこともあります。
置かれた状況によって選択できるセーフティネットはいくつかありますが、その1つに障害年金があります。
しかし他のセーフティネットと同様に、障害年金にも要件があります。
この章を読んでいただくと、そもそも精神障害とはどういったものを指すのかについて理解が深まり、障害年金の概要を把握することができます。

精神障害とは?

精神障害とは、精神疾患のために精神機能に障害が生じて、日常生活や社会参加が困難になっている状態をいいます。
『精神科産業医が教える障害年金請求に必要な精神障害の知識と具体的対応』(宇佐美和也著/日本法令)では、「精神障害がなぜ起きるのか、それはまだはっきりとわかっていない」と説明されています。
また、これまでの研究結果では「精神症状は脳の神経間の情報伝達がうまくいかないために起こる」と考えられているそうです。
精神障害を捉えるとき、「外因性精神障害」「心因性精神障害」「内因性精神障害」に分類すると理解しやすく、具体的には次のとおりです。

■外因性精神障害
はっきりとした原因によって脳神経が傷害され、精神症状がみられるもの。
外傷や身体疾患に伴うもの、薬物を摂取したことによるものなど。
例)脳挫傷、前身感染症、薬剤など

■心因性精神障害
心理的なストレスが原因となって精神症状が見られるもの。
例)ストレス反応(急性ストレス障害、PTSD)、適応障害、心因反応など

■内因性精神障害
原因がはっきりしないにも関わらず精神症状が見られるもの。
例)統合失調症、気分障害(うつ病・双極性障害)など

また、障害年金の視点から精神障害をみると、最も受給決定が多い障害種別です。
・腎疾患・肝疾患・糖尿病:約7.0%
・肢体:約18.8%
・精神:約61.5%

障害年金の概要

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、諸要件を満たすと受給できる年金制度です。老齢年金のように65歳以降でなくても受給資格を得られ、また障害の程度に応じた仕事をしながらでも受け取ることができます。

障害年金は、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、対象となる病気やけがについて初めて医師の診察を受けたときに加入していた年金制度により受給できる障害年金が決まります。
自営業や専業主婦などで国民年金にのみ加入していた場合は「障害基礎年金」を、会社勤めなどで厚生年金にも加入していた場合は「障害厚生年金」を受給することができます。
両者では用意されている障害等級が異なり、障害厚生年金のほうがより軽い障害も対象に含まれています。
障害の程度は重い順から1級、2級と数えられ、障害基礎年金では2級まで、障害厚生年金では3級まであります。また、障害厚生年金では障害手当金という、さらに軽い障害に対して一時金を支給する制度も設けられています。

ここまで障害の程度(度合い)について紹介しましたが、どれだけ障害の程度が重くても、「年金の納付状況」が要件を満たせていないと、受給はできません。

具体的には、障害年金を受給するためには、初診日の前日時点で、初診日の属する月の前々月までの期間のうち2/3以上ついて保険料が納付済みあるいは免除されていることが必要です。(期限付きで特例措置もありますが、原則はこの考え方です。)

また、年金の納付状況を判断するために「初診日の特定」も重要となります。
この証明は「受診状況等証明書」という様式で医師が行いますが、記入を依頼して発行された証明書を見ると、本人と認識が違ったということもあります。

例えば、本人は初診日と思っていたけれども、初診時の受け答えで「別の病院で診てもらっていたが、引っ越したので初めて来院した」「数年前から具合が悪く、一度病院で診てもらったこともあったが落ち着いたのでしばらく病院には行っていない」といったやり取りがされ、カルテに記録されていると、初診日は別の病院であるといった判断になります。

障害年金の必要性とメリット

制度の概要や申請ポイントは理解できても、申請をためらう方が一定数いらっしゃいます。
もちろん、受給せずに充実して安定した生活を送れるのなら問題ないですが、受給できる要件に該当していて、受給することによってあらゆる心配ごとから解放されるのであれば、ためらう必要はありません。

例えば精神の障害が原因で働くことが難しく生活に困窮している方が、収入面の不安を年金受給で軽減できれば、より療養に専念できるかもしれません。
等級によっては子の加算もあるため、ご家族がいる方にとっても助かる制度になっています。

必要とする方に必要な支援が届くよう設けられた制度なので、うしろめたさを感じることなく、社会復帰するための前向きな手段の一つとして障害年金の申請を検討してみてください。
とくに現在生活保護を受給している方にとっては生活の自由度が高まる側面もあります。

例えば生活保護費だけで生活を維持している場合、家族から遺産を相続すると財産を持っているとみなされて生活保護費の受給は打ち切りになってしまうことがあります。つまり財産を保有していないことが生活保護を得る前提条件なので、車や家を持つことも制限されます。
その他にも、生活保護費として受給したお金の使途を報告するなどの制限があり、もちろん貯金も認められません。
これに対して、障害年金を受給していても働いて収入を得ることに制限がありません。

障害年金申請における病名の重要性

精神障害で障害年金を申請するうえで、障害年金の対象となっている病名かどうかはとても重要です。なぜなら後述するとおり、精神障害の中でも人格障害や神経症といった類は原則対象外とされているからです。
精神障害をお持ちの方からの障害年金申請のご相談では、ご本人が認識していた病名と実際の病名が異なっていたり、当初診断された病名から病状の経過から病名が見直されていたりすることも珍しくありません。

一般的な精神障害の解説

ここでは一般的にも知られている精神障害について簡単に解説していきます。もちろん症状は人それぞれですので、ここで書いた内容がすべての方に当てはまるわけではありません。

■統合失調症
19世紀後半から認識されている病名で、かつて日本では「精神分裂病」と呼称されていましたが、偏見の助長を防ぐために2002年から統合失調症に名称変更されました。
統合失調症は100人に1人が発症するとされており、身近な病気といわれています。
特徴的な症状としては、妄想・幻覚・まとまりのない会話や行動・感情の平板化や意欲の欠如といったものがあります。
これらの症状は陽性症状と陰性症状に分けられ、妄想や幻覚は陽性症状に、感情の平板化や意欲の欠如は陰性症状とされます。
一般的にイメージされる統合失調症は陽性症状を発症している印象が強いと思いますが、実際には統合失調症患者は陰性症状の期間の方が長くうつ病と見分けがつきづらい時期もあることから、うつ病との誤診ケースもあるようです。

■うつ病
うつ病は大きく気分障害に分類されますが、この気分障害は10年ほどで患者数が2倍以上になるなど近年のメンタルヘルス問題のほとんどがうつ病に関するものとされています。
人間であれば誰しも憂鬱な気持ちになるときがあるものですが、正常範囲の憂鬱さとうつ病による憂鬱さには「症状の持続期間」および「強さ」に違いが見られます。
正常範囲の憂鬱であれば気分が落ち込む原因がはっきりとしていて、その事象の発生からしばらく経てば気持ちも回復してきます。
しかしうつ病の場合はこれといった理由もないまま気持ちが沈むこともあり、そして長期化してしまいます。長期化の基準は「2週間以上」とされています。
憂鬱さの強さについても、正常範囲の憂鬱さであれば落ち込みながらも日常生活や社会生活はいつも通りやり過ごすことができますが、うつ病の場合はそういった日常のことにも制限がおこり、食事や入浴といった基本的なこともままならない生活になってしまうこともあります。

■双極性障害
双極性障害は「躁うつ病」とも呼ばれ、気分が高い時(躁)と低い時(うつ)の気分の波に2つの山をもつものをいいます。生涯有病率は統合失調症と同程度の約1%といわれています。
うつ病の欄で紹介したうつ症状の特徴を持つほか、躁病としての症状も持ち合わせますが、躁病の症状にはイライラしやすい「易刺激性」、快楽的活動へ熱中してしまう「逸脱行動」、例えば自分は現実離れして素晴らしい人間などと確信してしまう「誇大妄想」が挙げられます。
また、双極性障害にはⅠ型とⅡ型があり、次の通り分類されます。
・双極性Ⅰ型障害:躁病が存在するもの
・双極性Ⅱ型障害:うつ病に加えて軽躁病が存在するもの

病名が申請に与える影響

精神を患っていても、すべてが障害年金で掲げられる障害等級に該当するわけではありません。
対象外とされる代表的なものに、神経症や人格障害があります。
障害年金には認定基準が設けられていますが、そこで次の通りハッキリと明文化されているのです。

(以下、障害認定基準より抜粋)
神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。
なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。

このように解釈される背景として、患者自身による自己治癒の可能性が期待できる点や、保護的環境下にあることで疾病利得を感じて精神症状の消失を阻害してしまう可能性が懸念される点など、障害年金制度の趣旨と照らし合わせて考えられています。
ただし書きにもあるように、例外として、神経症を抱える人がICD-10に記載されている統合失調症や気分障害(感情障害)の症状を併発している場合に限り、障害年金の受給の可能性があります。

<神経症とは?>
心配事や不安が募ることによって現れる症状の総称で、皆さんも聞きなじみのある「ノイローゼ」も神経症と同義とされています。(神経症のドイツ語が語源)
また、一般的に神経症は、うつ病のように「〇〇病」といった病名がつくものよりも軽度であるとされつつも、生活に支障をきたす不調があるものを指します。
神経症は「総称」のため、その症状は様々なものがあります。よくあるものを例にあげると、次の通りです。

■不安神経症(パニック障害)
動悸や息苦しさを伴う前触れのない突然の発作が起き、この発作によって死を想像してしまうほどの恐怖を伴います。発作自体に恐怖心を抱くようになり、外へ出かけることが難しくなるなどの行動の制限が生まれることもあります。

■強迫神経症
とても強い強迫観念を抱き、その強迫観念を打ち消すために更に強迫行為を繰り返す神経症です。強迫神経症によって引き起こされる行動の例として、カギをきちんと閉めたか不安になって何度も確認してしまう(ひどい場合は外出先から戻って確認したくなるなど)といったものです。
不安や心配は誰しも日常生活で多少なり抱えているものですが、神経症といわれるとそれらが一般の度合いよりも強くなってしまっている状態といえます。
<人格障害とは?>
人格障害はパーソナリティ障害とも呼ばれていて、もしかするとこの呼び方のほうが耳にすることがあるかもしれません。
この人格障害(パーソナリティ障害)は、日常生活や本人の行動に支障をきたす思考等の特性を抱える人のことを指します。
パーソナリティ障害は10種類あるといわれ、さらにその10種類を3つのグループに分類できるとされています。
グルーピングして、確認していきましょう。

■変わっていると受け取られる特徴を持つもの
・妄想性
・シゾイド(他者に無関心)
・統合失調型

■演技がかっている、感情的と受け取られる特徴をもつもの
・反社会性
・境界性
・演技性
・自己愛性

■不安や恐れを抱く特徴をもつもの
・回避性
・依存性
・強迫性

各特徴の詳細についての説明はここでは割愛しますが、これらの人格障害を抱えることで、人間関係を構築するのに苦労する・自己同一性に欠けるなどの問題が生じるとされています。

発達障害や知的障害の場合

発達障害をお持ちの方は日常生活でも支障が起こり得る特徴を抱えていることもあり、度合いはその方によって異なりますが、お仕事が難しいケースも少なくありません。
周囲となじめなかったり、周りの指示が理解できなかったり、やる気はあるけれどもうまくいかなくなってしまい、辛さを感じてうつ病などの心の病気も生じてしまうなどして、ますます社会との距離が生まれることもあります。

このように、発達障害は社会的にサポートが必要な病気といえるため障害年金においても発達障害は対象とされており、要件を満たせば受給することが可能です。
発達障害は生まれながらに持っている特性であることが多いとされていますが、大人になってから自覚症状などがでて初めて受診し、発達障害と診断が下るケースも珍しくありません。
通常、生まれながらの障害であれば障害年金を考える際に「20歳前傷病」として扱われますが、発達障害の場合は通常の障害と同様、初診日から1年6か月後が障害認定日となります。
そのため、幼少期から学校でなじめないなど困ったエピソードがあったとしても、大人になって初めて発達障害の症状について医師の診断を受けたのであれば、その日を「初診日」とし、障害認定日もそこからの起算となるのです。

これに対して知的障害の場合は原則出生日を初診日として起算しますので、発達障害の場合とで違いがある点に注意が必要です。

補足:初診日と障害認定日について

■初診日とは?
障害又は死亡の原因となった病気やケガについて、初めて医師等の診療を受けた日を指します。
同一の病気やけがで病院が変わるなどした場合は、最初に医師等の診療を受けた日を初診日として扱います。

■障害認定日とは?

日本年金機構が説明している言葉をそのまま記載すると、障害認定日とは障害の状態を定める日のことで、「その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月を過ぎた日、または1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日」を指します。

精神障害者の障害年金申請でよくある誤解

精神障害者の方が障害年金を申請する際、現在の状況として「障害者手帳を持っていない」「仕事をしている(会社に籍がある)」ことを気にされるケースをよくお見掛けします。
結論として、障害年金において障害者手帳を取得していなくても問題ありませんし、仕事ができる状況であっても何らかの配慮や制限を要するのであれば受給できる場合もあります。

障害者手帳の有無が申請に与える影響

一般的に障害者と聞くと、“障害者手帳を交付されている人”といったイメージが浮かぶかもしれませんが、障害年金においては必ずしも障害者手帳を必要条件とはしていません。
障害年金の申請書において、障害者手帳の有無あるいは申請中であるかを問う項目はあるものの、障害者手帳を持っていなくともそれだけを理由に受給が認められないといったことはありません。
誤って認識されていることも多く、これまで障害年金の申請を諦めたかたもいらっしゃるかもしれません。
障害者手帳を持っていなくても障害年金の受給の可能性はあるので、他の章で紹介している要件に該当するのであれば請求(申請)を検討する余地はあると言えます。

余談ですが、障害者手帳をアプリで持ち運べることをご存知ですか?
障害者手帳アプリを謳っていることから分かるように、最大のメリットは「障害者手帳」をスマートフォン等のアプリを入れたデバイスで表示できることです。
障害者手帳を提示するシーンは実は想像以上に多岐に渡るのです。そこで普段から携帯しているスマートフォンで障害者手帳を提示できるとなると非常に便利で、荷物も減りますよね。
スマートフォンにはロックもかけられますから、障害者手帳を持ち歩いている場合よりも紛失時の心配が軽減されることも大きなメリットといえます。
また、障害者手帳を長く所持しているひとにとって経年劣化は避けられない問題でしたが、アプリ化することでそのような問題も解決できます。
障害者手帳をアプリ内に登録できる機能のほかに、自身が使っている福祉機器についてのメモが登録できるのも、まさに痒い所に手が届く機能ではないでしょうか。
例えば、車いすの幅や重さなどの情報を予め記録しておけば、都度測る手間も無くせますよね。
その他、それぞれの障害の特性に応じたお役立ち情報を閲覧できる機能もあるため、障害者手帳を提示するシーンの他にも日常的に活用できるアプリになりそうです。

働きながら障害年金の受給は可能か?

次の章でも触れていますが、障害年金を受給できれば必ずしも障害年金のみで生活できるものでもありません。
例えば過去に厚生年金に加入していない方が障害基礎年金の2級で受給が決定した場合、障害年金の年額は795,000円です。(令和5年4月時点)これを分割した額を毎月受け取れるのではなく、偶数月に前月までの2か月分を受け取ることになります。
795,000円を12か月で割って1か月相当額を算出すると66,250円です。確かに生活の足しにはなりますが、この額のみで生活を営むのは厳しいことがイメージできると思います。
障害基礎年金の場合、要件を満たす子供がいれば加算もありますが、それでも健康な方が働いて得る金額にはとても及びません。
そういった事情からも、働きながらの障害年金受給を希望される方もいらっしゃるかと思います。
実際の相談場面でも、タイトルにもあるように「働きながら障害年金の受給は可能か?」といったご質問を多々寄せられるのですが、就労していることだけをもって受給できないというものでもありません。
ただし、障害年金をもらえる程度の障害として想定されているのは、日常生活が制限される程度のものということもあり、何らかの制限のもと就労ができているということを強調する必要があります。
例えば従来の業務が夜勤だったところ、体への負荷が高いことを医師に指摘され日勤に切り替えるため配置転換をしてもらったり、責任の重い役職から外してもらったりなど、負荷の軽減や就労時間の制限など、一定の条件下でのみ働けているのであれば、働きながらであっても障害年金を受給できる可能性はあります。

精神障害での障害年金取得後のアドバイス

精神障害で障害年金を受給できても、最低額での受給の場合は生活費として十分な金額を得られるわけではありません。決して贅沢できるものではなく、慎ましい生活を送らざるを得ません。
勤め先で理解があるのであれば、勤務ペースや業務内容を見直しての勤続や、支援を受けながら福祉的就労をして少しでも収入を得られる道も考えられます。障害年金のみでの生活よりも安定させることができます。
この章は「勤続したいけれど会社には障害年金のことはバレたくない」「無理なく働ける福祉的就労ってどんなもの?」といった疑問を解決できる内容となっています。

A型・B型事業所と障害年金

冒頭では「福祉的就労」と表現しましたが、いわゆる「就労継続支援事業所」がそれに該当します。
就労継続支援事業所とは一般企業での就職が難しい方が利用できる障害福祉サービスです。
支援を受けながら生産活動などに従事し、職業訓練を受けることができる機関です。
障害を持っていることを前提として通所するので適切な支援を受けながら働くことができ、障害年金を受けながら多少の賃金(工賃)を得ることができるので、リハビリや社会参加の意味合いからも利用を検討しても良いかもしれません。
「就労継続支援事業所」には、「A型」と「B型」があります。それぞれの特徴は以下の通りです。

■就労継続支援A型
一般就労は難しい状況にあるものの、支援を受けながら就労できる場です。最大の特徴は雇用契約を結び就労できる点で、雇用契約があるため最低賃金が適用されます。
従事する仕事内容は事業所により異なりますが、簡単な事務作業や軽作業が一般的です。
フルタイムでの勤務よりは短時間勤務で週3日程度の勤務が多い傾向にあり、月の収入として得られる額は8万円程度が目安です。

■就労継続支援B型
対してB型は、A型のように雇用契約を結びません。
A型よりも福祉要素が強く、訓練として作業に従事する意味合いが強いものとなります。
雇用契約を結ばないので作業への対価には最低賃金が適用されず「工賃」として支払われます。
1時間あたりの工賃目安は300円程度が一般的とされており、1か月に1万5000円程度の工賃を得るような方が多いようです。

また、同じく障害福祉サービスで名称が似ているものに「就労移行支援事業所」もありますが、就労移行支援事業所は利用期間に上限があり、就労継続支援事業所のように賃金(工賃)が発生しない点で違いがあります。

障害年金受給を会社にバレたくない

障害年金のご相談で良く耳にするのが「会社にばれたくない」といったお声。
障害年金は国が用意している制度ですから、恥じる・隠す必要はないかと社労士としては思います。

しかしながら、「障害年金もらっているなら~という理由で給与をあげてもらえなさそう」といったご心配や、「なんとなく知られたくない・・・」といった不安から会社にばれたくないといったお気持ちになるとのお声がたびたび寄せられます。
原則、自ら公表しない限り会社に障害年金の受給がばれることはありません。
入社にあたって個人番号を提出するかと思いますが、そのマイナンバーによって会社が調べることもできませんし、年末調整や社会保険手続きでばれてしまうことも基本的にはありませんが、唯一バレる可能性があるシーンがあります。
それは、「傷病手当金」の申請手続きにおけるシーンです。

というのも、傷病手当金と障害年金の受給理由が同一の場合、両者には調整が発生してしまいます。
そのため、障害年金の受給を問う欄が申請書に設けられており、そこに正しく回答する必要があります。
傷病手当金の申請は基本的に会社を通して提出しますので、そこで障害年金の受給が発覚するという可能性は考えられます。
ばれたくないからといってわざと「受給していない」と回答することは問題となりますので、仮に障害年金と同一の理由にて傷病手当金の申請が必要となった際には、正直に公表する必要があります。

精神障害での障害年金と併給調整されるアレコレ

障害年金を受給される方の中には他のセーフティネットも受給していることが多いですが、二重取りできるものは基本的に少なく、原則としてなにかしらの方法で併給調整がなされます。
ここでは、ご相談時によく質問にあがる健康保険制度である「傷病手当金」と、「生活保護」との関連について説明します。

障害年金と傷病手当金

「傷病手当金」は、その名称までは認識していなくても「休職中にお金がもらえる制度」として一般的に浸透しているのではないでしょうか。傷病手当金制度の概要は以下の通りです。

傷病手当金の制度は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
傷病手当金は、被保険者が病気やけがのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給され、支給期間は1年6か月が上限です。
ただし、休んだ期間について事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けた場合には、傷病手当金は支給されません。

金額は、1日当たりの計算式に基づいて算出されます。
1日当たりの金額:【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)

障害年金は受給決定がされるまで時間を要するため、傷病手当の受給期間中に準備に取り掛かるケースも多いです。
そのため、受給期間の重複が起こり得ますが、両方を受給することはできず【併給調整】が起こります。
多くの場合、傷病手当金の方が1日あたりの金額が大きいので、障害年金と傷病手当金の重複部分は障害年金として受給し、障害年金を超える金額のみ傷病手当金として差額受給します。
つまり、重複部分の傷病手当金は保険者へ返還することになります。

障害年金と生活保護

生活保護を受給している方から障害年金の申請相談を受けた際に、「生活保護と障害年金は両方受け取ることができますか?」といったご質問をたびたび受けることがあります。

結論として両方を満額受け取ることはできず調整がかかるのですが、生活保護を受けている人にとっては、手元にいくら残るのかが気になるところだと思います。

生活保護を受給している方が障害年金を受けられるようになると、障害年金に相当する額が生活保護かと実質相殺されてしまいます。

というのも生活保護は、憲法第25条で定められた「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」といった部分を保障するために設けられたセーフティネットとなる制度です。
生活保護は世帯単位で行われるため、世帯員全員の資産や能力等すべてをもってしても最低限度の生活が難しいときに保護対象となります。
ここでいう「資産や能力“等すべて”」の中には年金や手当なども含むと解釈されており、つまり「他法優先」という考え方になります。
そのため、生活保護受給者が障害年金も受給できるようになった場合についても、他法(=ここでは障害年金)が優先されて扱われます。

実際の調整額に関する計算は、障害年金の受給権を得ることで生活保護のほうにも障害者加算が発生するか否かなども考慮して考える必要がありますが、簡単に説明すると「生活保護費が障害年金の額を上回る場合、生活保護費と障害年金が重複する部分(つまり障害年金)をそのまま生活保護費の返還にあてる」ことになります。
障害年金の受給権を将来に向かって得るのであれば、今後受給する生活保護費に対して障害年金が調整されるのですが、過去にさかのぼって障害年金の受給権が発生した場合、生活保護費も過去にさかのぼって返金の必要が生じるケースがあります。

精神障害で障害年金の請求を検討しているなら社労士へ!

障害年金の請求(申請)に関する相談は、最寄りの年金事務所で無料相談をすることが可能です。
ただし、あくまでも公的機関のため、申請書類に関する案内や納付状況の確認などの一般的なことについての取り扱いとなります。
また、年金事務所での相談履歴は記録されるため、知識を持たずに不用意に相談することは賢明ではありません。年金事務所は「審査機関」である点を注意しましょう。

その点、社労士は年金の「申請のプロ」です。申請経験が豊富な社労士であれば重要なポイントを押さえながら、相談者に合わせた案内を受けることができます。
料金設定はそれぞれなので、より希望に合う社労士に依頼すると良いでしょう。

ひとつ注意点があるとすれば、生活保護を受給している方は社労士にご相談される前に市役所や担当ケースワーカーに相談されることを推奨しています。
「障害年金と生活保護」の章でも紹介した通り、障害年金と生活保護は調整の関係にあります。
その結果生活保護費の返金が発生するため、社労士へ支払う成功報酬によって経済的な負担が一時的に厳しくなる可能性があります。

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