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ネガティブ・ケイパビリティとは?現代こそ身につけたい「答えを急がない勇気」

ネガティブ・ケイパビリティという言葉を耳にしたことはありますか?

私も最近目にすることが増えて知ったこのネイティブ・ケイパビリティ。

知れば知るほど、タイパ(タイムパフォーマンス)が求められる現代でこそ必要なスキルだと感じました。

前回のブログで取り上げたGRITに続いて自己啓発的なテーマになりますが、ネイティブ・ケイパビリティはGRITともまたテイストの異なる視点になるので、ぜひ前回ブログと併せてご覧いただければと思います。

そして今日は成人の日ですね。

これからの未来を切り拓いていく新成人の方々にもネガティブ・ケイパビリティの力を知っていただき、これからの世をサバイブしていくのに役立ててもらえると嬉しいです。

ぜひ、最後までお読みください。

目次

ネガティブ・ケイパビリティとは?

ネガティブ・ケイパビリティという言葉は、まだまだ認知度が低いかもしれません。
というのも“VUCA”の時代(※)ともいわれる現代社会では、ネガティブ・ケイパビリティよりもポジティブ・ケイパビリティを重要視する傾向にあるからです。
※VUCA…不安定(Volatility)、不確実(Uncertainry)、複雑(Complexity)、不明瞭(Ambiguity)

まずはここで、ネガティブ・ケイパビリティの意味を知り、ポジティブ・ケイパビリティと比較してみることから始めましょう。
(以下の説明はこのあと紹介する書籍を参考にしています)

■ネガティブ・ケイパビリティとは?
・事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、懐疑のなかにいられる能力
・どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力
・曖昧さやパラドックスと共存し、それを許容する能力
・「すべてはわかっていない」状態を良しとし、中途半端な知識を合理化したり、事実を追い求めたり、既存の知識や考え方で思考停止したりすることなく、不確実で曖昧な状態の中にとどまる能力
・違和感を抱えたまま、とどまる力
つまり、ネガティブ・ケイパビリティとは何かを「しないでおく」能力と捉えることができますが、決して無計画に先延ばしをしたり思考停止したりすることではありません。
人間、とくに現代の人間は不確実なもの(こと・状態)が苦手で、過去の経験と結びつけて答えを出したり、安直な結論で片づけようとしがちです。
この対応力も重要なスキルではあるのですが、クイックレスポンスが良しとされる社会に適応しようとするあまり、熟考すればより良い答えにたどり着けることでも熟考の機会を持たない(持てない)ようになってしまっているのではないかという懸念を背景に、あえて考えとどまるネガティブ・ケイパビリティの大切さが注目されるようになりました。

しかしながら、先にも触れたようにVUCAの時代においてはポジティブ・ケイパビリティのほうが重要視されがちです。
ポジティブ・ケイパビリティとはひとことでいえば、問題解決能力です。
たとえば、情報を収集する能力・分析する能力・計画を立てる能力・資料を作成する能力・スピーチをする能力といったような、就職面接などでアピールされやすい能力とイメージするとわかりやすいかもしれませんね。
能力発揮が鮮やかに映りやすいポジティブ・ケイパビリティに対してネガティブ・ケイパビリティは消極的と誤解されやすく地味ではありますが、積極的になにかをするのと同じくらいかそれ以上に、意図してなにかをしないことはとても難しいことです。

ネガティブ・ケイパビリティとポジティブ・ケイパビリティは使い分けが肝心

ネガティブ・ケイパビリティとポジティブ・ケイパビリティについて見比べると、ポジティブ・ケイパビリティのほうが能力としてわかりやすく、魅力的に思えるかもしれません。
ただ、両者は強みを発揮できるシーンが異なります。
ポジティブ・ケイパビリティは比較的答えや具体的な達成目標があるような場面で力を発揮するのに対し、ネガティブ・ケイパビリティは不確実要素が多い場面でもうろたえず冷静に物事を判断できる力として発揮されます。
つまり、場面に応じて使い分けられるように両方のスキルを備えることこそが重要だといえます。

AIの台頭で「将来なくなる仕事」が話題になることがありますが、ポジティブ・ケイパビリティ要素の強い仕事のほうがAIに取って代わられやすいという研究がされています。
ポジティブ・ケイパビリティが得意とする問題解決は、判断材料となるアルゴリズムさえ覚えさせておけば、あとは機械的に答えを導くことが可能です。これはAIの得意分野といえるでしょう。
一方、ネガティブ・ケイパビリティは判断材料に乏しい不確実なシーンでもあえて過去の類似ケースとは結び付けずに目の前のことを捉えなおしてみるなど、アルゴリズム化しづらい要素があるためAIには不向きとされています。
AIの参入が目覚ましいいま、人間ならではのネガティブ・ケイパビリティを高めていくことは、AIとの共存社会を生きていくうえで重要なことかもしれませんね。

ネガティブ・ケイパビリティを詳しく知りたい方におすすめ

ネガティブ・ケイパビリティについて紹介してきましたが、写真にもある書籍『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』(著者 枝廣淳子)がとても参考になりました。
キースという一人の詩人からネガティブ・ケイパビリティという言葉が生まれた時代背景にはじまり、ネガティブ・ケイパビリティという言葉こそ使わずともいにしえの時代から東洋思想にも同様の考えが根付いていたことや、名だたる経営者もネガティブ・ケイパビリティに似た心得を大切にしていたこと、臨床心理においても「葛藤保持力」と解釈されてきたことに触れつつ、広い視点でネガティブ・ケイパビリティを解説してくれる一冊です。

おわりに

ネガティブ・ケイパビリティは「器」とも解釈できると、上述の参考書籍内で触れられていたのが印象的です。
器とは、いわゆる人間の器の大小のことですが、“ネガティブ・ケイパビリティを備えた人は性急に決めつけたり判断したりせずに、いろいろな状況や人の感情・言動をそのまま「受け入れる」ことができる”と解説されていました。
またネガティブ・ケイパビリティで重要となる「待つ」「観察する」「耳を傾ける」「辛抱する」といったスキルは「社会的知性」としてケア業務で最も求められるスキルであるとも触れられており、私も襟を正す気持ちになりました。
ネガティブ・ケイパビリティの研究者によると、ネガティブ・ケイパビリティの会得によって、冷静でプレッシャーがあっても落ち着いて対処できる人物になれるとしています。
日々目まぐるしく変化があり情報が錯そうする現代社会において、あえて思考や意思決定の「間(ま)」をコントロールするような身のこなしは重要ではないでしょうか。
このブログを読んでくださった方が、ネガティブ・ケイパビリティに関心を持つきっかけになればうれしいです!

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