副業を認める?認めない?就業規則に盛り込む際の注意点

副業を認めるべきか?企業の判断が問われる時代に
働き方の多様化が進む現代において、「副業解禁」は大企業だけでなく中小企業にも無関係ではなくなってきました。
従業員のスキルアップや収入増につながる一方で、企業側にとっては情報漏えいや長時間労働などの懸念もあります。
本記事では、副業を許可する際のメリット・デメリットを整理しながら、就業規則にどのように明記すべきか、注意点とともに解説します。
副業を「認める」か「認めない」か、判断に迷う経営者・人事担当者の参考になれば幸いです。
目次
副業のメリットとデメリット

副業を取り巻く社会的な流れは急速に変化しています。
政府は「働き方改革」の一環として副業・兼業の推進を掲げており、2020年にはモデル就業規則の改訂により「原則副業・兼業を認める」旨が明記されました。(参考ページ)
副業はもはや一部の人だけの特別な選択肢ではなく、一般的な働き方の一つとして捉えられています。
このあと触れるように、副業は一概に「良い」「悪い」で判断できるものではありません。
企業としては、自社の業種や組織規模、労務体制を踏まえて、許可の範囲や条件を慎重に検討することが重要です。
【副業を認めるメリット】
1.従業員のモチベーション向上
本業では得られない経験や収入を得ることができ、働く意欲の向上が期待されます。
2.スキルの多様化とイノベーションの促進
副業で得た知識やスキルを本業に還元することで、社内に新たな価値をもたらす可能性があります。
3.離職防止
生活費を補うために転職を考えていた従業員が、副業を許可されることで会社に留まる場合もあります。
【副業を認めるデメリット】
1.本業への支障
副業で疲労が蓄積し、本業に集中できなくなるリスクがあります。勤務中のパフォーマンス低下も懸念されます。
2.報漏えいのリスク
競業他社での副業や、業務上知り得た情報を誤って提供してしまうケースには注意が必要です。
3.労務管理が複雑になる
労働時間の把握が難しくなり、過重労働による健康リスクや労災の責任問題が発生する可能性があります。
就業規則に盛り込む際のポイント

副業を容認するか否かに関わらず、「就業規則への明記」は極めて重要です。
曖昧なままにしておくと、従業員の認識の違いやトラブルの温床になりかねません。
ただし、副業をめぐる裁判例を参考にしてみても、「原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当」というのが見解の前提となります。
また、厚生労働省の資料にも以下のことが示されています。
これらを踏まえたうえで、いくつかポイントをお伝えします。
【副業を許可する場合】
・届出制にする
無制限に副業を認めるのではなく、「事前に申請し、会社が許可した場合に限る」といった形が一般的です。
内容や勤務時間を確認し、適切な判断ができる体制を整えましょう。
・競業避止義務の明文化
自社と同業他社での副業は禁止するなど、競業に関するルールは明確にしておくべきです。
企業秘密の保護にもつながります。
・労働時間の管理に関する注意書き
副業先の勤務時間と合わせて法定労働時間を超える場合、過重労働と見なされる可能性があります。
健康管理と労災対応の観点からも、「自己の健康管理は本人の責任による」といった注意書きを添えることも検討されます。
【副業を禁止する場合】
法的には、業務に支障が出る・企業イメージを著しく損なうといった「正当な理由」がある場合に限り、副業を禁止できます。
よって、全面禁止とする場合も以下のような工夫が求められます。
・「原則禁止」としつつも、やむを得ない事情がある場合の例外規定を設ける
・社内通達や説明会で、副業禁止の理由を周知し、従業員の理解を得る
【規定例の一部】
第◯条(副業・兼業)
労働者は、会社の許可なく他の事業に従事してはならない。
ただし、あらかじめ会社に申請し、会社が許可した場合はこの限りではない。
就業規則を定める際は、社労士など専門家と連携し、自社の事情に応じた形で設計することが大切です。
おわりに:副業を「認めるかどうか」より、「どう管理するか」

副業の容認は、時代の流れとして避けては通れない課題の一つとなっています。
しかし、それを「認めるか・認めないか」だけに焦点を当てるのではなく、「どう適切に管理し、トラブルを防ぐか」という視点がますます重要になってきています。
副業を認めることで、従業員のスキルアップやモチベーションの向上が期待できる反面、本業への影響や法的リスクも存在します。
そのため、就業規則に明確なルールを定めるとともに、定期的な見直しや、従業員とのコミュニケーションによって柔軟に運用していく姿勢が求められます。
また、副業を通じて得られる新たな知見やネットワークは、企業にとっても大きな資産となり得ます。
従業員と企業が「信頼関係のもとで副業に取り組む」ことこそが、今後の健全な働き方をつくる鍵になるかもしれません。
