法定雇用率を下回る企業必見-納付金を払い続ける前に知っておきたい「障害者雇用相談援助事業」

障害者雇用の法定雇用率を下回り、毎年「障害者雇用納付金」を支払っている企業は少なくありません。
「採用したいが進め方が分からない」「現場の理解が追いつかない」といった理由から、対応を後回しにしているケースも多いのが実情です。
しかし実は、一定の要件を満たす企業であれば、国の助成制度を活用しながら専門家の支援を受けて障害者雇用を進める仕組みが用意されています。
本記事では、法定雇用率の基本から、納付金を支払い続ける企業こそ知っておきたい「障害者雇用相談援助事業」について、実務目線で解説します。
目次
- ○ 障害者雇用の法定雇用率と「納付金制度」の基本
- ○ 法定雇用率未達企業が抱えがちな“現実的な悩み”
- ○ 障害者雇用相談援助事業とは?|助成金を活用した国の支援制度
- ・当事務所は「障害者雇用相談援助事業所」として認定を受けています
- ○ 納付金を「コスト」で終わらせないという選択
- ○ まとめ
障害者雇用の法定雇用率と「納付金制度」の基本
企業には、一定割合以上の障害者を雇用する義務があります。これが「法定雇用率制度」です。
2024年度以降、民間企業の法定雇用率は段階的に引き上げられており、従業員数が一定規模以上の企業は、その達成が法律上求められています。
この法定雇用率を下回った場合に発生するのが、「障害者雇用納付金」です。
これは罰金ではありませんが、未達成人数に応じて毎年継続的に発生するコストであり、企業経営にとっては無視できない負担となります。
一方で、「納付金を払っているから問題ない」「採用できない事情があるから仕方がない」と考え、具体的な対策に踏み出せていない企業も多く見られます。
しかし、法定雇用率は今後も引き上げが予定されており、現状維持=将来的なリスク拡大につながりかねません。
なお、未達企業からの納付金を徴収するだけでなく、法定雇用率を超えて障害者を雇用している企業に対しては、「障害者雇用調整金」の支給があります。
つまり、障害者雇用納付金制度は、雇用が進んでいる企業を評価・支援し、社会全体で障害者雇用を促進するための相互扶助的な仕組みです。
未達企業にとっても、適切な支援を受けながら雇用を進めることで、将来的に負担を軽減できる可能性があります。
法定雇用率未達企業が抱えがちな“現実的な悩み”
障害者雇用が進まない理由は、決して「やる気がない」からではありません。
実務の現場では、次のような悩みがよく聞かれます。
・どのような業務を切り出せばよいか分からない
・採用後の配慮や定着支援に不安がある
・現場社員や管理職の理解が追いつかない
・外部支援機関との連携方法が分からない
こうした課題を前に、「まずは納付金を払って様子を見る」という判断をしている企業も少なくありません。
しかし、障害者雇用は制度理解と設計さえできれば、段階的に進められるものです。
重要なのは、最初から完璧な雇用を目指すことではなく、「自社に合った雇用の形」を専門家と一緒に整理することです。
障害者雇用相談援助事業とは?|助成金を活用した国の支援制度
こうした企業のために用意されているのが、「障害者雇用相談援助事業」です。
これは、各都道府県労働局の認定を受けた「障害者雇用相談援助事業所」が、法定雇用率未達の企業に対し、障害者雇用に関する実践的な支援を行う制度です。
特徴的なのは、企業側の自己負担を抑えつつ、専門的な伴走支援を受けられる点にあります。
助成金を活用することで、
・雇用計画の立案
・業務の切り出し/整理
・社内体制づくり
・関係機関との連携支援
といったプロセスを、実務レベルで支援してもらうことが可能です。
「何から始めればよいか分からない」という段階の企業こそ、最も活用価値の高い制度だといえるでしょう。
当事務所は「障害者雇用相談援助事業所」として認定を受けています
当事務所は、厚生労働省の制度に基づき、「障害者雇用相談援助事業所」として認定を受け、法定雇用率を下回る企業に対する障害者雇用支援を行っています。
単なる制度説明にとどまらず、運営母体である社労士事務所の専門性と、障害福祉事業(相談支援事業所)を営む者として持つ知見を活用した実行支援を行える点が、認定事業所としての大きな特徴です。
また、障害者雇用を進めるうえで重要なのは、企業側の事情だけでなく、働く側である障害者の希望や状況を踏まえたマッチングです。
当事務所では、「障害者を雇用したいが、進め方が分からない企業」と、「働きたい意欲はあるが、職場との接点を持てていない障害者」の双方に対して継続的な働きかけを行っています。
企業向けには、業務の切り出しや受け入れ体制の整備、法定雇用率達成に向けた計画づくりを支援し、障害者の方に対しては、働き方の希望や配慮事項を丁寧に整理したうえで、無理のない就労につながるよう調整を行っています。
両者をつなぐ「調整役」として伴走できる点が、当事務所の障害者雇用支援の強みです。
納付金を「コスト」で終わらせないという選択
障害者雇用納付金は、支払えば終わりの制度ではありません。
むしろ、「なぜ未達なのか」を見直すためのシグナルともいえます。
「障害者雇用相談援助事業」を活用することで、
・将来的な納付金負担の軽減
・採用・定着ノウハウの社内蓄積
・企業の社会的評価の向上
といった中長期的な効果も期待できます。
「いずれ取り組まなければならない」のであれば、助成金と専門支援がある今のうちに着手することが、結果的に最も合理的な選択です。
まとめ
障害者雇用は、制度を正しく理解し、適切な支援を活用することで、無理なく進めることができます。
法定雇用率を下回り、納付金を支払っている状態は、改善の余地があるというサインでもあります。
「自社だけで抱え込まず、まずは相談する」
その第一歩として、障害者雇用相談援助事業の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
