育児・介護休業法が求める「個別周知・意向確認」の実務対応

育児・介護休業法の改正により、企業には育児休業を希望する従業員に対して「個別周知・意向確認」を行う義務が課されています。
これは制度をより利用しやすくし、育児と仕事の両立を支援することを目的とした重要な義務です。
しかし中小企業では、いつ・誰に・どのように説明すれば良いのかが曖昧なまま運用されているケースも少なくありません。
本記事では、法律が求める具体的な内容と実務のポイントをわかりやすく整理して解説します。
目次
そもそも「個別周知・意向確認」とは何か

育児休業制度の利用を後押しするため、企業には男女を問わず対象従業員に対して育児休業制度を「個別に」説明し、休業取得の意向を確認する義務が課されています。
この「個別周知・意向確認」の義務は、本人からの申し出を待つのではなく、企業側からアプローチしなければならない点が最大の特徴です。
企業が主体的に働きかけなければならない運用へと強化されているため、従来のように、育休を申し出た従業員だけに対応すれば良いという考え方では、法令遵守が不十分となる点に注意が必要です。
そしてもちろんのこと、 取得・利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。
説明すべき内容は以下の通り明確に定められています。
②育児休業・出生時育児休業の申出先
③ 育児休業給付に関すること
④ 社会保険料の取扱い多岐にわたります。
説明すべき内容は幅広いため、担当者の知識不足によって不正確な情報を伝えてしまうとトラブルのもとになります。
厚生労働省が提供するリーフレットなどを活用し、最新の制度に基づいた説明ができる体制を整えましょう。
また、個別周知・意向確認の実施時期は「妊娠・出産を申し出た時点」が基本です。
妊娠が判明した従業員が会社へ報告した時点、または配偶者の妊娠を報告した男性社員についても対象となります。
つまり、男女問わず育児休業取得の可能性がある従業員全員が対象者となります。
書面化・ルール化して運用を安定させる

個別周知・意向確認はスポット対応ではなく継続的な義務です。
そのため企業としての運用フローを明文化し、担当者間で情報が共有される仕組みを作ることが重要となります。
例えば、妊娠・出産の報告を受けたら「チェックリストに沿って必要事項を説明する」「記録シートを人事部門に提出する」といったルール化が効果的です。
また、上司によって対応の差が生じないよう、管理職研修を実施する企業も増えています。
必要に応じて説明補助資料やテンプレートを用意するなど、担当者の負担を軽減する仕組みづくりも重要です。
さらに、育休取得後の復職支援やキャリア相談の体制を整えることで、従業員が長期的に安心して働ける環境が整います。
制度の利用促進とともに離職防止や職場定着にもつながるため、中小企業でも積極的に取り組む意義があります。
おわりに

育児・介護休業法が求める「個別周知・意向確認」は、単なる説明義務ではなく、企業が従業員のライフイベントを支援する重要なプロセスです。
適切に行うことで、従業員が安心して育児休業を取得し、職場復帰後も継続して働くことができる土台が整います。
一方で、説明漏れや記録不足、担当者による運用のバラつきはトラブルの原因になりえるため、就業規則や育児休業規程の整備、担当者教育などとあわせて総合的な運用体制を構築することが理想的です。
