自己愛性パーソナリティ障害ってどんな病気?障害年金の受給対象になるかについても解説。
自己愛性パーソナリティ障害と呼ばれる人格障害をご存知ですか?
成長の過程で正しく自己愛を育むことができなかったことが大きな要因となりますが、そのことに無自覚なことも珍しくなく、無意識のうちに形成された人格障害によって引き起こされる症状によって苦しむケースもあります。
このブログは参考書籍等で得た情報を集約して、初めて自己愛性パーソナリティ障害を知った人にも概要を掴んでいただける内容としました。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
自己愛性パーソナリティ障害とは
書籍、心のお医者さんに聞いてみようシリーズの『自己愛性パーソナリティ障害』(後述)では、自己愛性パーソナリティ障害とは肥大した自尊心に振り回される「自尊心の病」と表現されています。
病名に「自己愛」とあることからナルシストな自惚れ病のような先入観があるかもしれませんが、実はもっと複雑さが隠されています。
自信家に振る舞いがちで、周囲からは扱いづらいと思われることも少なくありませんが、本当は自信家であるどころか、ありのままの自分を受け入れられない/周囲の期待に応えられなければ自分には価値がないといった感情に支配され、自尊心が傷つくのを極端に恐れます。
そのような思考回路を持つ背景として、親に甘えてはいけないと思って育ってきた等、無条件に愛された感覚がないことが挙げられます。
親が子に対して条件付きで愛した結果として招くケースも考えられますが、親の側にそういった自覚がなくても子供が親の気持ちや挙動に繊細なため、親の顔色や機嫌など親からのリアクションを推し量ってしまうケースや、社会的背景が影響しているケースもあります。
親側が起因している場合に多くの場合で母親が重要な影響を及ぼす存在といえます。本来、母性こそ無条件の愛で、母親からの「掛け値なし」の愛情で自己肯定感を育み、健全な自己愛が養われます。
こういった背景から自己愛を育み損ねた結果、自己愛性パーソナリティ障害を引き起こすと考えられていますが、苦痛が生じない限りは人格の特性として捉えられます。
苦痛とは、もちろん自分自身が感じる苦痛もありますが、本人が無自覚のまま対人トラブルに繋がり相手が苦痛を被ることもあります。例えば家庭内暴力やパワハラなどの背景に自己愛性パーソナリティ障害が隠れている場合もあります。
参考書籍
今回、自己愛性パーソナリティ障害に関するブログを作成するにあたって、参考とした書籍をご紹介します。
監修:精神科医・市橋クリニック院長 市橋秀夫
写真にもありますこの書籍は、上で記載した自己愛性パーソナリティ障害の定義を含め、正しい知識をわかりやすく記載してくれています。
随所で挿絵もあるため説明のイメージが掴みやすく、全95ページとコンパクトながらも概要が掴める充実した内容です。
自己愛性パーソナリティ障害の診断は難しい?
自己愛性パーソナリティ障害は本人が無自覚なことも少なくありません。そのため、別の問題で受診に至った結果、自己愛性パーソナリティ障害が発覚することもあります。
自己愛性パーソナリティ障害によって引き起こされる現象の例として、摂食障害や強迫性障害があります。摂食障害はまさに世間の価値観に過度に合わせようとして、周囲から評価されるようなプロポーションを求めて健康的な食事が摂れなくなってしまいます。強迫性障害は、自己愛性パーソナリティ障害の特徴である「完璧主義」による現象と考えられます。
自己愛性パーソナリティ障害が無自覚のうちにこれらの症状を発現していても、自己愛性パーソナリティ障害と診断することすらも困難である場合も多いのです。また自己愛性パーソナリティ障害を指摘されてもその後の治療は容易ではないことが多いようです。
というのも、その病名の通り自尊心に原因を抱えているため、本人が自分の病的な部分を隠そうとするなど他人に弱みを見せまいとする性質が邪魔をしてしまうのです。
必ずしも実情に即した判断基準とはいえないようですが、DSM(アメリカ精神医学会の診断マニュアル)にて以下のような診断基準が設けられています。診断基準には2パターンあり、それぞれを【A】および【B】としてご紹介します。
パーソナリティ機能について:中程度以上の障害で、ふたつ以上に当てはまるか否か
①同一性
自己認識および、自尊心の制御のために、過度に他者を引き合いに出す。過大、または過小な自己評価、またはその両極端を揺れ動く誇張された自己評価
②自己指向性
他者からの承認を得ることに基づいて目標を設定する。
個人的な基準が、自分が特別であると見なすために不合理に高い
③共感性
他者の感情や欲求を読み取る能力に障害がある。自己に関係があると認識される場合にのみ、他者の反応に調子を合わせる。
④親密さ
人間関係は表面的で関心がない。他者は自尊心の制御に役立つための存在。個人的利益に関する要求を優先することで、相互の関係に制約が生まれる。
病的パーソナリティ特性について:両方をもっているかどうか
①誇大性
特権意識があり、自分が他者より優れているという信念を強固にもつ。他人を見下す。
②注意喚起
他者の注意を引き、注目の的になろうとする。過剰な賞賛を求める。
自己愛性パーソナリティ障害で障害年金の受給は可能か
過去ブログでも紹介したことがありますが、パーソナリティ障害、いわゆる人格障害は原則として障害年金の対象とならない疾患です。
例外として、精神病の病態を示すものであれば対象となる可能性もありますので、医師がどのように診断していて、診断書にどのような記載がされるかによります。
パーソナリティ障害を抱えている方での受給例としては、「境界性パーソナリティ(境界性人格障害)」で該当するケースが多い傾向にあるとされています。
おわりに
今回は「自己愛性パーソナリティ障害」についてお届けしました。
自己愛性パーソナリティ障害への理解が深まると同時に、改めて、人の振る舞いや思考には様々な背景があるのだと考えていただけるきっかけになったのではないでしょうか。
このブログで書かれてた内容に思い当たる節がある方も、そうでない方も、こういった人格特性があるということを知っていただくきっかけになり少しでも多くの方の役に立てると嬉しいです。更に詳しく知りたい方は、ぜひ紹介した書籍もお手に取ってみてくださいね。
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