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男女雇用機会均等法について社労士がわかりやすく解説

男女雇用機会均等法という法律があるのはご存知でしょうか?

名前くらいは聞いたことがある、という方は多くいらっしゃるかもしれませんね。

漢字の羅列のようなこの法律名、改めてじっくり見つめてみると「男女」の「雇用機会」が「均等」であることを守る法律であることがわかります。

では、なぜあえて法律を作る必要があったのでしょうか?

男女雇用機会均等法が制定される前の日本において、男女の性別の違いによる雇用機会や雇用環境はどのような状況だったのでしょうか?

現代においては性差別(ジェンダー差別)があってはならないことだという認識は浸透してきていますが、日本においてもそうではない時代があったのです。

このブログでは、そういった背景もふくめて男女雇用機会均等法について知ることができる内容となっています。

ジェンダー平等の実現はSDGsの掲げる目標のひとつでもありますから、ぜひ理解しておきたい内容です。

ぜひ、最後までお読みください。

目次

男女雇用機会均等法について

男女雇用機会均等法(だんじょこようきかいきんとうほう)を知るにあたって、まずは条文を見てみましょう。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
(目的)
第1条 この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。
(基本的理念)
第2条 この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあつては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。2 事業主並びに国及び地方公共団体は、前項に規定する基本的理念に従つて、労働者の職業生活の充実が図られるように努めなければならない。

この条文からも読み取れるように、

男女雇用機会均等法の母こと赤松良子(あかまつりょうこ)さん

男女雇用機会均等法の成立に多大なる貢献をされた赤松良子さんが、先日お亡くなりになりました。この訃報をニュースで知った方も多いかと思います。
今回のブログテーマである男女雇用機会均等法を語るうえで赤松良子さんの存在は避けて通れないくらい重要な存在です。
この章では、哀悼の意も込めて、赤松良子さんの軌跡に触れたいと思います。
赤松良子さんは、労働省(現・厚生労働省)で女性の地位向上に熱心に取り組み、85年の男女雇用機会均等法制定に局長として尽力したことから「均等法の母」と呼ばれています。
その後は文部大臣や日本ユニセフ協会会長としても活躍しました。
赤松さんが女性が当たり前に働くことができる社会を目指した背景には、幼少期に「職業婦人」に憧れた経験がありました。
加えて、赤松さんのお母さんが自身が充分な教育を受けられなかったことから、娘である赤松さんへの教育にも強い思いを抱いており、そういった背景のもと赤松さんは自立した女性を目指す基盤が培われました。
そして、まだまだ女性が教育を受けることに理解がなかった時代に、津田塾から東大へ進まれ、上述したように官僚として活躍されるのです。
赤松さんが自身の信念を貫き尽力くださり、今日の女性の地位向上が実現されました。

男女雇用機会均等法によって法整備されたこと

男女雇用機会均等法によって様々なことが整備されました。いくつかご紹介するので、確認していきましょう。
中には特に新鮮に感じない(当たり前に感じている)ものも多いかと思います。いまでこそ当たり前として認識されていることでも、整備されたからこそ当たり前になっているのです。

性別を理由とする差別の禁止

男女雇用機会均等法5条にて、「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定められており、差別的な取扱いも同法6条で以下の通り具体的に定められています。

①労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む)、昇進、降格及び教育訓練
②住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生※の措置であって厚生労働省令で定めるもの
③労働者の職種及び雇用形態の変更
④退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新

※福利厚生の例
・生活資金、教育資金その他労働者の福祉の増進のために行われる資金の貸付
・労働者の福祉の増進のために定期的に行われる金銭の給付
・労働者の資産形成のために行われる金銭の給付
・住宅の貸与

婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止等

男女雇用機会均等法9条にて、以下の通り定められています。

①事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
②事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
③事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法65条1項の規定による休業を請求し、又は同項もしくは同条2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
④妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が③に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない

セクシュアルハラスメント及び妊娠・出産等に関するハラスメント対策

一般的にはセクハラやマタハラとして浸透していますが、法律上は「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置」として男女京機械均等法11条に具体的な定めがされています。

①事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
②事業主は、労働者が①の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない。
③事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる①の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
④厚生労働大臣は、①~③の規定に基づき事業主が講ずるべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。

上記①のように、解雇・降格・減給等の不利益を受けるものを「対価型セクシュアルハラスメント」、性的な言動により就業環境が不快になるものを「環境型セクシュアルハラスメント」といいます。
また、③にあるようにセクシュアルハラスメント防止についての義務は、派遣先事業主にも適用される点もポイントです。
上記の規定に関連して、「職場における性的な言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務」も男女雇用機会均等法11条の2で努力義務として規程されているので確認してみましょう。

①国は、男女京機械均等法11条1項に規定する不利益を与える行為又は労働者の就業環境を害する同項に規定する言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(この条において「性的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
②事業主は、性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
③事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、性的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
④労働者は、性的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる男女雇用機会均等法11条1項の措置に協力するように努めなければならない。

母性健康管理措置

男女雇用機会均等法12条にて、母性健康管理措置(=妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置)として以下のことが定められています。

事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない

上記定めによって、以下の措置が事業主には求められます。
①事業主は、その雇用する女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない。
②厚生労働大臣は、①の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。

労働者と事業主との間に紛争が生じた場合の救済措置

男女雇用機会均等法が扱う範囲にて労働者と事業主との間に紛争が生じた場合、苦情の自主的解決や都道府県労働局長による紛争解決の援助、紛争調整委員会による調停などの規定が定められています。
厚生労働大臣(多くの場合は都道府県厚生労働局長に委任)は必要に応じて事業主に対して報告を求めることができ、助言や指導のほか勧告をすることもできます。
また、勧告に従わないときは、その旨を公表することができます。

男女雇用機会均等法だけじゃない!ジェンダー平等はSDGsの目標のひとつ

ここまでで見てきたとおり、男女雇用機会均等法は雇用の分野においての性差別(ジェンダー差別)を無くすための法律です。
このジェンダー差別の撤廃つまりジェンダー平等の観点は、男女雇用機会均等法のある日本だけが追い求める形ではありません。
世界的に認知されている「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」通称「SDGs」においても、ジェンダー平等は目標のひとつとして掲げられています。
ユニセフHPの文言を引用してSDGsを説明すると、SDGsとは次のような解釈になります。

貧困、紛争、気候変動、感染症。人類は、これまでになかったような数多くの課題に直面しています。
このままでは、人類が安定してこの世界で暮らし続けることができなくなると心配されています。
そんな危機感から、世界中のさまざまな立場の人々が話し合い、課題を整理し、解決方法を考え、2030年までに達成すべき具体的な目標を立てました。
それが「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」です。
―ユニセフHPより引用
SDGsとして目標が17つ掲げられ、それぞれ次の通りです。
【1】貧困をなくそう
【2】飢餓をゼロに
【3】すべての人に健康と福祉を
【4】質の高い教育をみんなに
【5】ジェンダー平等を実現しよう
【6】安全な水とトイレを世界中に
【7】エネルギーをみんなにそしてクリーンに
【8】働きがいも経済成長も
【9】産業と技術革新の基盤をつくろう
【10】人や国の不平等をなくそう
【11】住み続けられるまちづくりを
【12】つくる責任つかう責任
【13】気候変動に具体的な対策を
【14】海の豊かさを守ろう
【15】陸の豊かさも守ろう
【16】平和と公正をすべての人に
【17】パートナーシップで目標を達成しよう

各目標にはさらに具体的な細分化した達成目標である「ターゲット」が設定されていますが、「【5】ジェンダー平等を実現しよう」のターゲットは以下の通りです。
・すべての女性と女の子に対するあらゆる差別をなくす
・女性や女の子を売り買いしたり、性的に、また、その他の目的で一方的に利用することをふくめ、すべての女性や女の子へのあらゆる暴力をなくす。
・子どもの結婚、早すぎる結婚、強制的な結婚、女性器を刃物で切りとる慣習など、女性や女の子を傷つけるならわしをなくす。
・政治や経済や社会のなかで、何かを決めるときに、女性も男性と同じように参加したり、リーダーになったりできるようにする。
・国際的な会議で決まったことにしたがって、世界中だれもが同じように、性に関することや子どもを産むことに関する健康と権利が守られるようにする。

おわりに

いかがでしたか?男女雇用機会均等法がどのような背景のもと作られ、そして現在に活かされているかを知っていただけたと思います。
今回のテーマに絡めたSDGsの目標はジェンダー平等でしたが、目標の「【8】働きがいも経済成長も」と「【10】人や国の不平等をなくそう」においても重要なターゲットが盛り込まれています。

【8】働きがいも経済成長も
→「2030年までに、若い人たちや障害がある人たち、男性も女性も、働きがいのある人間らしい仕事をできるようにする。そして、同じ仕事に対しては、同じだけの給料が支払われるようにする。」

【10】人や国の不平等をなくそう
→・2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる。
・差別的な法律、政策やならわしをなくし、適切な法律や政策、行動をすすめることなどによって、人びとが平等な機会(チャンス)をもてるようにし、人びとが得る結果(たとえば所得など)についての格差を減らす。
・財政、賃金、社会保障などに関する政策をとることによって、だんだんと、より大きな平等を達成していく。

これらから、いかに性別にかかわらず働くことができるということが重要であるかが分かりますね。
今回のブログを通じて男女雇用機会均等法ひいては性別にかかわらず平等に働くことのできる社会について考えるきっかけになれば幸いです。
このブログでは様々なテーマで情報発信しています。ぜひ、他の記事もお読みいただけると嬉しいです。

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