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てんかんは約100人に1人の割合で発症するってご存知ですか?

てんかんという言葉自体は聞いたことがあっても、自分が当事者であるか身近にてんかんを持つ人がいないと実際にどんな症状が起こる病気なのか知らないことも多いのではないでしょうか。

タイトルにもある「てんかんは約100人に1人」という発症割合も、想像以上に多いと感じた方もいるでしょう。

このブログでは、てんかんとはどんな病気なのか、そしてどういった症状がみられるのかについてご紹介しています。

あわせて、社労士の立場から「てんかんと障害年金」という視点でもてんかんに触れていますので、ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。

目次

てんかんについて知ろう

てんかんをテーマに選んだきっかけは、少し前に「てんかんと認知機能」に関するセミナーに参加したためです。
障害年金を扱う社労士としてそして相談支援事業所の相談支援専門員として、とても関心のあるテーマだったので参加させていただいたのですが、本当に学びの多いセミナーでした。
この章は「てんかんいついて知ろう」というタイトルですが、これは日本てんかん協会と日本てんかん学会による10月のてんかん月間の 啓発ポスターでの「もっと知ってください、てんかんのこと。」という訴求から、“まずは知ること” の大切さをお伝えすべく導入部分でてんかんの知識のおさらいを入れることにしました。

てんかんの定義と診断方法

てんかんの定義について、厚生労働省HPでは次のように紹介されています。

「てんかん」とは、「てんかん発作」を繰り返し起こす状態です。「てんかん発作」は、脳にある神経細胞の異常な電気活動により引き起こされる発作のことで、突発的に運動神経、感覚神経、自律神経、意識、高次脳機能などの神経系が異常に活動することで症状を出します。そのため、「てんかん発作」ではそれぞれの神経系に対応し、体の一部が固くなる(運動神経)、手足がしびれたり耳鳴りがしたりする(感覚神経)、動悸や吐き気を生じる(自律神経)、意識を失う、言葉が出にくくなる(高次脳機能)などのさまざまな症状を生じます。

また、てんかんの診断は、発作症状・画像診断・脳波検査などから行われます。
てんかん診療ガイドライン2018によると、まずは詳細な病歴聴取および身体的診察がなされ、その結果に応じて脳波検査、画像検査を経ててんかん確定診断がされるとされています。

てんかんの発作型分類、てんかんの治療

てんかんの発作としてイメージされやすいのは、けいれんの発作ではないでしょうか。
私もてんかんのセミナーに参加するまではてんかん=けいれんタイプの発作との印象を強く抱いていました。
しかしながら、けいれん発作には部分発作と全般発作があり、そしてそれぞれにいくつかの発作型があることから、広く認識されているけいれん発作はてんかん発作の一種に過ぎないことを知りました。
具体的には次のような発作型があるとされています。

■部分発作
・単純部分発作
・複雑部分発作
・二次性全般化発作
■全般発作
・欠伸発作
・ミオクロニー発作
・間代発作
・強直発作
・強直間代発作
・脱力発作
このようにてんかんは発作型が様々なため、治療についてもてんかん発作型やてんかん症候群に応じた薬物治療が検討されます。

てんかんと障害年金

てんかんの症状が重いと、社会生活が難しくなることはここまでの説明で想像いただけるかと思います。
そういったケースの場合に重要になるのが社会保障ですが、この章では社労士として“てんかんと障害年金”について触れていきたいと思います。

■障害年金 予備知識
障害年金には、初診日時点で加入していた保険制度により「障害基礎年金」または「障害厚生年金」のどちらに該当するかが決まります。
というのも、両者にはいくつか制度の違いがあり、1つは制度で包括できる障害等級の範囲、もう1つは加算の対象です。
それぞれ順番に説明していくと…

〇障害等級について
障害等級は重い方から1級・2級・そして3級と続きますが、3級は障害厚生年金に限り対象とされている点で注意が必要です。
例えば、精神障害3級相当の障害の程度の方の場合、障害厚生年金が適用される方(初診日時点で厚生年金の被保険者だった)であれば障害等級3級で障害厚生年金の受給の可能性がありますが、障害基礎年金の場合には受給が難しくなります。

〇加算について
一定の要件を満たした場合、加算がつくことがありますが、簡単に説明すると「障害基礎年金では子の加算」「障害厚生年金では配偶者の加算」がされる場合があります。

代表してこのような違いがあるものの、対象とする障害の種類は共通です。
申請に用いる障害年金用の診断書の種別ごとにご紹介すると次の通りになります。
①眼の障害
②聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害
③肢体の障害
④精神の障害
⑤呼吸器疾患の障害
⑥循環器疾患の障害
⑦腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害
⑧血液・造血器・その他の障害

このように障害年金において対象とされる障害の種類は様々ですが、「てんかん」はどの障害に該当すると思われますか?
答えは「精神の障害」ですが、精神の障害の診断書様式を使う必要があるために、てんかんの症状の種類によっては困難さが反映されづらいことも指摘されています。
▼日本法令『新訂第2版 詳解 障害年金相談ハンドブック』より
てんかんについて障害年金が受給できにくくなっているのは、「精神の障害」の診断書様式を使うことにより、精神症状を伴わない、てんかん発作のみによる障害の場合に、その日常生活能力や労働能力低下が十分に反映されないためです。

てんかん当事者によるスーパー指南書『てんかんと人生』(加納 佳代子 著)

てんかんに関する知識を知るほどに当事者の記録について触れたいと感じ、写真にもある加納佳代子さんによる『てんかんと人生』にたどり着きました。(私は冊子体で購入しましたが、Kindle版は無料公開されています!)
加納佳代子さんは70歳を超えた現在も精神科病棟の看護部長として勤めながら講談看護師 加納塩梅として活動され、てんかん当事者として啓発活動を行っておられるようです。
『てんかんと人生』では、てんかんのことを「てんかんてんでんこ」と表現し、つまりてんかんといってもその実態は“てんでんこ(東北地方の方言でてんでんばらばらの意味)” であるとしたうえで、てんかんを当事者目線で解説してくれる1冊です。
文中では、てんかんは30を超えるてんかん症候群の総称であり1つの病気ではないこと、そしててんかんは特別な病気ではないと知ることが、無知ゆえのてんかんへの偏見やそこから生まれる差別をなくすことにつながると教えてくれます。
また、支援者心構えの章では「配慮はするけど特別扱いはしない」といった姿勢を当事者は求めていると書かれており、これを知れたことは大きな気づきでした。
てんかんを特別視しない姿勢は支援者だけでなく本人にもとっても大切で、てんかんは自分の“一部”であって全部ではないこと、職業や結婚・子育てに制限を感じなくて良いことが書かれており、当事者にとっても励まされる内容だと感じました。
社労士として興味深かったのは「日本でてんかんが絶対的欠格とされている国家資格は航空パイロットのみで、相対的欠格を含めても難易度の高い職業はたったの十種類」という点です。(日本には1万7000以上の職種があるとされています)
つまり、てんかんという理由だけで希望する職業をあきらめることはなく、ましてや差別的な取り扱いが起こるようなことがあってはならないのです。
『てんかんと人生』はこのほかにもてんかんに関する知識がふんだんに詰め込まれており、youtubeチャンネルとも連動したつくりになっているので、気になった方はぜひ読んでみてください。

おわりに

てんかんをテーマにまとめてみましたが、いかがだったでしょうか。
てんかんのセミナーで「てんかんの最も多い死因は自殺」と知り強い衝撃を受けました。
その一方で、『てんかんと人生』の中では元イングランド代表のプロサッカー選手のジェイ・ボスロが自身のてんかんを病気ではなくコンディションと受けとめ、「私がてんかんであることは、サッカーのキャリアにまったく影響しなかった」といった発言の紹介があり、本人を取り巻く環境がてんかん当事者の人生を左右するのかもしれないと考えさせられました。
少しでもてんかんの認知度と症状の理解が進み、てんかん患者の方々が生きやすい世の中になればと願います。

このブログでは、今回のように特定の病気に関する内容のものや労働分野のお話しなど様々なテーマを扱っています。
毎週月曜日に更新しているので、過去のブログ記事も含めてご覧いただけると嬉しいです。


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