育児休業給付金の支給対象期間延長のルールが2025年4月以後変わります!

育児休業給付金は、育児のために職場を離れ休業する一定期間に対して雇用保険制度より支払われる生活保障です。
育児と仕事を両立させることの困難さや子育てにかかる費用が少子化の要因とも言われていますが、育児休業給付金はそのような方にとって無くてはならない制度といえます。
今回のブログでは、そんな育児休業給付金の制度変更について取り上げています。
タイトルにある「支給対象期間延長」のほかにも2025年4月からの変更点がいくつかありますので、ぜひご覧ください!
目次
- ○ 育児休業給付金ってどんな種類があるの?
- ・出生時育児休業給付金
- ・育児休業給付金
- ・育児時短就業給付金
- ○ 育児休業給付金はいくらもらえるの?
- ○ 育児休業給付金の支給対象期間の延長って何歳までできるの?
- ○ 育児休業給付金の支給対象期間延長、ここが分かれ道に!
- ○ 育児休業給付金の不正受給は、もちろん厳しく対処されます
- ○ おわりに
育児休業給付金ってどんな種類があるの?
育児休業給付(厳密には後述するように数種類あることから「育児休業“等”給付」という)には、従来から「出生時育児休業給付金」と「育児休業給付金」の制度がありましたが、新たに2025(令和7)年4月1日から「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」が創設されます。(このうち出生後休業支援給付金は、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給を受ける者が、一定の要件を満たした場合に上乗せで支給される給付金です。)
以下に、給付金ごとの支給要件をまとめました。
出生時育児休業給付金
出生時育児休業給付金は従来からありますが、令和4年10月1日より施行された比較的新しい制度です。
通称「産後パパ育休」とも呼ばれるように、産後間もない期間(産後8週間を経過する日の翌日までの期間)に取得する育児休業に対する給付金です。
注意が必要なのは、女性の場合産後8週間は「産後休業」にあたるため、この“出生時育児休業”は実質男性(父親)被保険者を対象にしているものといえます。
では、具体的な支給要件を確認していきましょう。
■支給要件
① 「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間内に、4週間(28日)以内の期間を定めて、当該子を養育するための産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した被保険者であること(2回まで分割取得可)。
②休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)完全月が12か月以上あること。
③休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であること。
④ 期間を定めて雇用される方の場合、子の出生日から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、その労働契約の期間が満了することが明らかでないこと。
① 同一の子について、出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休(出生時育児休業)を通算して14日以上取得した被保険者であること。
② 被保険者の配偶者が子の出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合※」 に該当していること、または、被保険者の配偶者も産後パパ育休の期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと。
※配偶者の育児休業を要件としない場合
1.配偶者がいない
2.配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
3.被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
4.配偶者が無業者
5.配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない
6.配偶者が産後休業中
7.1~6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない
育児休業給付金
育児休業給付金は、原則子が1歳になる日(つまり1歳の誕生日の前日)の前までの間に取得する育児休業のことであり、具体的な支給要件は次の通りです。
■支給要件
①1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得した被保険者であること(2回まで分割取得可)。
②休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)完全月が12か月以上あること。
③一支給単位期間中の就業日数が10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であること。
④期間を定めて雇用される方の場合、養育する子が1歳6か月に達する日までの間に、その労働契約の期間が満了することが明らかでないこと。
①同一の子について、育児休業給付金が支給される育児休業を対象期間に通算して14日以上取得した被保険者であること。
②被保険者の配偶者が、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと、または、子の出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合※」に該当していること。
※配偶者の育児休業を要件としない場合
1.配偶者がいない
2.配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
3.被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
4.配偶者が無業者
5.配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない
6.配偶者が産後休業中
7.1~6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない
育児時短就業給付金
育児時短就業給付金は2025(令和7)年4月1日新しくはじまる制度で、具体的な対象者や支給要件は次の通りです。
■支給対象者
育児時短就業給付金は、次の(1)①・②の要件をいずれも満たす方であって、育児時短就業中の(2)①~④の要件をすべて満たす月について支給されます。
(1)受給資格
①2歳未満の子を養育するために、1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業する被保険者であること。
②育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始したこと、または、育児時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある)完全月が12か月あること。
(2)各月の支給要件
①初日から末日まで続けて、被保険者である月
②1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
③初日から末日まで続けて、育児休業給付又は介護休業給付を受給していない月
④高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月
■支給対象となる時短就業(育児時短就業)
育児時短就業給付金の支給対象となる時短就業(育児時短就業)とは、2歳に満たない子を養育するために、被保険者からの申出に基づき、事業主が講じた1週間当たりの所定労働時間を短縮する措置をいいます。
育児休業給付金はいくらもらえるの?
育児休業給付金はいくらもらえるのか?…最もみなさんの関心が高いであろう点について、ここでは述べていきます。
休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)× 67%
出生時育児休業期間を対象として事業主から賃金が支払われた場合には支給額に調整がかかります。
・支払われた賃金の額が「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%以下の場合→休業開始時賃金日額×休業期間の日数×67%
・支払われた賃金の額が「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%超~80%未満の場合→休業開始時賃金日額×休業期間の日数×80%ー賃金額
・支払われた賃金の額が「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の80%以上の場合→支給されません
休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)
※出生時育児休業給付金が支給された日数は、育児休業給付金の給付率67%の上限日数である180日に通算されます。181日目以降は給付率50%となります。
原則、出生時育児休業給付金または育児休業給付金を受給した方のうち一定要件を満たす方に、以下の計算式で算出した額が支給されます。
休業開始時賃金日額×休業日数(28日が上限)×13%
ただし、休業期間に事業主から賃金が支払われた場合には調整がかかります。
【出生時育児休業期間を対象として事業主から賃金が支払われた場合】
・「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%以下の場合→休業開始時賃金日額×休業期間の日数×13%
・「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%超~80%未満→休業開始時賃金日額×休業期間の日数×13%
・「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の80%以上→支給されません
【育児休業期間を対象として事業主から賃金が支払われた場合】
・「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%(30%※)以下→休業開始時賃金日額×休業期間の日数×13%
・「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%(30%※)超~80%未満→休業開始時賃金日額×休業期間の日数×13%
・「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の80%以上→支給されません
※育児休業の開始から181日目以降は30%
(1)支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%以下の場合→支給対象月に支払われた賃金額 × 10%
(2)支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%超~100%未満の場合→支給対象月に支払われた賃金額 × 調整後の支給率
(3)支給対象月に支払われた賃金額と、(1)又は(2)による支給額の合計額が支給限度額※を超える場合→支給限度額- 支給対象月に支払われた賃金額
※支給限度額(2025(令和7)年7月31日までの額): 459,000円
育児休業給付金の支給対象期間の延長って何歳までできるの?
育児休業給付金について、2025(令和7)年4月1日から新たに創設されるものも含めて上の章でご紹介しました。
さてここからは本題に入り、タイトルにもある「支給対象期間の延長」について、2025(令和7)年4月1日以降どのように制度に変更があるかについて触れていきます。
育児休業給付金の支給対象期間は、原則子が1歳に達する日前までの期間です。
しかし、休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる事由(延長事由)によって、子が1歳に達する日後の期間に育児休業を取得する場合は、その子が1歳6か月に達する日前までの期間、育児休業給付金の支給対象となります。
さらに、休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる事由(延長事由)によって、1歳6か月に達する日後の期間に育児休業を取得する場合は、その子が2歳に達する日前までの期間、育児休業給付金の支給対象となります。
育児休業給付金の支給対象期間延長、ここが分かれ道に!
育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが2025年4月から変わるのですが、具体的には以下のような変更です。
■これまで:保育所等の利用を申し込んだものの、当面入所できないことについて、市区町村の発行する入所保留通知書などにより確認
■2025年4月から:これまでの確認に加え、保育所等の利用申し込みが、“速やかな職場復帰のために行われたものであると認められること“が必要になる。
→この、“速やかな職場復帰のために行われたものであると認められること“をジャッジするために「市区町村等に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し」の提出が必要になりました。
そして申込書の写しでの次の箇所から、速やかな職場復帰の意思があるのかどうかを確認されます。
①入所申込年月日が1歳に達する日までの日付になっていること
②原則として子が1歳に達する日の翌日以前の日を入所希望日として入所申込をしていること
③申し込んだ保育所等が合理的な理由なく自宅から通所に片道30分以上要する施設のみとなっていないこと
④申し込みの際に入所保留を希望するような意思表示があったととれる記載がされていないこと
⑤子が1歳に達する日の翌日時点で保育所等の利用ができる見込みがないこと(発行年月日が子が1歳に達する日の翌日の2か月前の日以後の日付となっていること※4月入所申し込みの場合は3か月前)
つまり、これまでは入所保留通知のみで延長手続きがとれたところを、これからは「市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し」が必須になるため、まずは申込書の写しを取り忘れないように気を付けることが大切です。
そのうえで申込書の細部が要件を満たす必要があるため、これらを押さえているかどうかが支給対象期間延長手続きを適切に取れるかの分かれ道になるといえますね。
育児休業給付金の不正受給は、もちろん厳しく対処されます
育児休業給付金のこのたびの制度変更の背景には、「制度主旨にそぐわない不適切な延長」が横行したことが挙げられています。
要するに、保育所等への入所を最初から望んでいないにもかかわらず育児休業給付金の受給期間の延長を狙い、わざと入所保留となるような動きを取る人が一定数いたようです。
このような動きは育児休業給付金の不正受給につながりますが、これにはもちろん厳しい罰則が設けられています。
具体的には、次のような処分を受ける可能性があるので十分に気をつけましょう。(ハローワーク資料より引用)
このような場合、不正受給した金額の3倍の金額を納めなければなりません。
事業主等が虚偽の支給申請書等を提出した場合等は、事業主等も本人と連帯して処分等を受けます。支給申請書を提出する前に、記載内容をよくご確認ください。
おわりに
育児休業給付金は育児中により休業中の人にとって生活を支える大切な保障ですよね。
地域によっては待機児童の問題もあり、思うようなスケジュールで保育園等への入所がかなわないケースもあるかと思います。
そんな方にとって延長手続きはとても重要な手続きとなりますが、制度変更を知らずいると困ったことになるかもしれません。
そのようなことを招かぬよう、少しでも多くの方に周知すべく今回のブログテーマ選定としましたが、読んでくださった方にとって、少しでも参考になっていると嬉しいです。
今回のように制度にまつわるテーマ以外に、様々なテーマで週に1度新しい記事を更新しています。毎週月曜日にアップしているので、これからもご覧いただけると嬉しいです。
「このブログを書いているのってどんなひと?」「このHPを運営している会社(社労士事務所)ってどんなところ?」と興味を持ってくださった方は、自己紹介動画(YouTubeで2分程度のアニメーションです)もご覧いただけると嬉しいです。