障害年金の等級と「日常生活能力」の考え方

障害年金の受給を検討している方にとって、「等級がいくつになるのか?」という点は非常に大きな関心事です。
しかし、実際には障害名や診断名だけで等級が決まるわけではなく、「日常生活能力の程度」と「その判定」が重要な要素として評価されます。
本記事では、障害年金の等級決定における「日常生活能力」の役割について、わかりやすく解説します。
目次
「等級」はどうやって決まるのか?

障害年金には、障害基礎年金(1級・2級)と障害厚生年金(1級~3級+障害手当金)があります。
精神疾患などの多くの場合、「日常生活への支障」がどの程度あるかが主な判断材料となります。
この等級は、以下のような基準に基づいて決まります
・1級:他人の援助がなければ日常生活を送ることが困難な状態
・2級:日常生活に著しい制限がある状態
・3級(厚生年金のみ):労働に支障をきたす程度の障害がある状態
精神障害や発達障害のケースでは、「障害そのものの重さ」だけでなく、どれだけ日常生活を自力で送れるかという実生活上の支障度が問われます。
「日常生活能力の判定」とは何か

精神障害の診断書では、「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」という2種類の評価が用いられます。
これらは、主治医が作成する診断書(精神の障害用)に記載される重要な項目です。
◆ 日常生活能力の判定(7項目)
以下の7つの観点から、それぞれどの程度支障があるかを「できる/少しできる/できない」などの段階で評価します。
・適切な食事
・身辺の清潔保持
・金銭管理と買い物
・通院と服薬の管理
・他人との意思伝達および対人関係
・身辺の安全保持および危機対応
・社会性
この評価が、「どれくらい生活に支障があるのか」を定量的に示す材料になります。
◆ 日常生活能力の程度(総合評価)
7項目の判定をもとに、以下の5段階で総合的に評価されます
① ほぼ自立している
② 日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要
③ 単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要
④ 日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要
⑤ 身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要
この「程度」に応じて、おおよその等級が見えてきます。
診断書の内容が等級を左右する

障害年金の審査では、実際の面談や現地調査などは行われません。
あくまで提出された診断書や病歴・就労状況申立書などの書類をもとに審査されます。
そのため、診断書の記載が曖昧だったり、実態よりも軽く書かれていたりすると、本来受け取れるはずの等級よりも低く評価されてしまうリスクがあります。
たとえば、「外出は可能」と記載されていても、週に1回しか外出できない場合と、毎日買い物に行ける場合では生活実態が大きく異なります。
この点が診断書や申立書に反映されていないと、審査側は誤った印象を持ってしまうかもしれません。
等級に不満がある場合はどうすれば?
申請して等級が思ったより低かったり、不支給になってしまった場合でも、「審査請求」や「再審査請求」などの不服申立て制度を利用することができます。
ただし、不服申立てを行う場合も、元の診断書の修正はできないため、別途新しい証拠や追加資料を提出して正しい実態を訴える必要があります。
提出内容や表現の仕方も重要になるため、専門家に相談するのがおすすめです。
社労士に相談するメリットとは?

「日常生活能力」は、単なる診断書の記載だけでなく、実態を適切に言語化し、正確に書類に反映させることが重要です。
社労士に依頼することで、以下のようなメリットがあります
・書類作成時の「主治医への情報提供」のコツを伝えられる
・病歴・就労状況申立書を生活実態に合わせて適切に表現できる
・診断書内容と申立書の整合性をチェックできる
・審査請求や再審査請求のサポートが可能
特に、精神障害や発達障害での申請は等級が不安定になりやすいため、経験豊富な社労士に一度相談する価値は十分にあるでしょう。
まとめ

障害年金の等級は、単に「病名」だけで決まるものではありません。「日常生活能力」という、実際の生活状況をもとに評価される要素が極めて重要です。
診断書や申立書の記載が審査結果を左右するため、申請前には情報整理や専門家の助言が欠かせません。
適切な等級を得るためにも、自分の状態を正確に伝える準備をし、必要であれば社労士のサポートを受けながら申請を進めましょう。
