「働きがい」は会社が作るのか、それとも自分で見つけるものなのか

近年、「働きがい」や「やりがい」を重視する働き方が語られる一方で、“仕事に何を求めるのか”そのものも変化しています。会社にやりがいを求めることは悪いことではありません。しかし、働きがいは本当に会社だけが与えるものなのでしょうか。本記事では、働き方や価値観の変化、支援や組織のあり方にも触れながら、「仕事の手ごたえ」や「働く意味」をどのように捉えるべきかを考えます。
目次
- ○ 「働きがい」が重視される時代になった一方で
- ○ 「やりたいこと」だけが、働きがいになるわけではない
- ○ 環境だけでは、“働きがい”は生まれないこともある
- ○ 「働きがい」は、関わり合いの中で育っていく
- ○ おわりに
「働きがい」が重視される時代になった一方で

近年、「働きがい」や「やりがい」という言葉を耳にする機会は以前より増えました。
給与や待遇だけではなく、
自分らしく働けるか、成長実感があるか、納得感を持てるか――そうした“働く意味”そのものを重視する人も増えています。
これは決して悪い変化ではありません。
かつてのように、「とにかく我慢して働く」「会社に合わせ続ける」といった価値観だけでは、多様な働き方や人生観に対応しづらくなっているのも事実です。
一方で最近は、「仕事にやりがいを感じられない」「会社が成長機会を与えてくれない」といった言葉が語られる場面も増えています。
もちろん、会社側にも働きやすい環境づくりや適切なマネジメントは求められます。しかし、“仕事の手ごたえ”や“充実感”までを、すべて会社側が用意するものとして考え始めると、働くこと自体が少し受け身になってしまう側面もあります。
大前提として、会社と労働者は雇用契約のもとに成り立つ関係です。
会社は賃金や環境を整え、労働者は労務を提供する。その中で、互いの役割や責任があります。
だからこそ、「やりがいがある仕事しかしたくない」「常に成長実感を得たい」という感覚だけでは、組織の中で働く難しさも出てきます。
働きがいを大切にすることと、“やりがいを与えてもらうこと”を当然視することは、似ているようで少し違うのかもしれません。
「やりたいこと」だけが、働きがいになるわけではない

働きがいというと、「自分の得意分野を発揮できること」をイメージする人も多いと思います。
確かに、自分の好きな仕事や得意な業務に携われることは、大きなモチベーションになります。
しかし実際の仕事は、“自分がやりたいこと”だけで完結するものではありません。
例えば、裏方業務や調整役、サポート業務、細かな確認作業など、一見すると目立たない役割の中で組織が成り立っている場面も多くあります。
そして時には、「自分では当たり前にやっていること」が、周囲にとって大きな助けになっていることもあります。
つまり、働きがいとは、“自分が発揮したいと思っている能力”だけから生まれるとは限らないのです。
会社という組織の中では、さまざまな得手不得手が組み合わさることで仕事が成り立っています。
自分では価値を感じていなかった役割が、実はチーム全体にとって重要だったり、自分では不得意だと思っていた仕事を通じて、別の強みが見つかったりすることもあります。
最近は、「自己実現」という言葉が重視される一方で、“自分がやりたいこと”と“組織で求められること”の距離感に悩む人も少なくありません。
しかし、働くことは本来、個人だけで完結するものではなく、誰かとの関係性の中で成り立っています。
だからこそ、「やりたいことができているか」だけではなく、「自分の働きがどこかで誰かの役に立っているか」という視点も、働きがいを考える上では大切なのかもしれません。
環境だけでは、“働きがい”は生まれないこともある

近年は、企業にも「働きがい」や「心理的安全性」を高めることが求められるようになっています。
実際、相談しやすい環境や柔軟な働き方、フラットに対話できる関係性は安心して働くために重要な要素です。
特に、障害福祉や就労支援の現場でも、「どんな環境なら安心して働けるか」を考える場面は増えています。
ただ、その一方で、「会社や支援者が、本人のやりがいまで作らなければならない」と考え始めると、少し難しさも出てきます。
例えば、自分から周囲との関わりを避けたり、失敗することへの不安から挑戦を控えたり、“仕事の手ごたえ”が自然に与えられるのを待つ状態になってしまうと、どれだけ環境を整えても、働く実感につながりにくいことがあります。
もちろん、これは本人の努力不足という単純な話ではありません。
働きづらさや不安を抱える人に対して、「もっと主体的に」と求めるだけでは、逆に苦しさを強めることもあります。
だからこそ重要なのは、「会社が全部与える」「本人が全部頑張る」という二択ではなく、“一緒に作っていく感覚”なのではないでしょうか。
働きがいは、制度だけで生まれるものでも、個人の気持ちだけで生まれるものでもありません。
人との関係性や、小さな成功体験、役割実感の積み重ねの中で、少しずつ形になっていくものなのかもしれません。
「働きがい」は、関わり合いの中で育っていく

「働きがい」は会社が作るものなのか、それとも自分で見つけるものなのか。
おそらく、その答えはどちらか一方ではありません。
会社側には、安心して働ける環境づくりや、対話できる土台を整える責任があります。
一方で、働く側にも、「自分は何に手ごたえを感じるのか」「どんな関わり方なら無理なく働けるのか」を探していく視点が必要になります。
そしてその過程では、自分が想像していた形とは違うところで、働く意味や役割が見つかることもあります。
働きがいとは、“最初から用意されているもの”というより、会社と個人、周囲との関係性の中で少しずつ育っていくものなのかもしれません。
おわりに

働き方や価値観が多様化する中で、「働きがい」に対する考え方も変わり始めています。
会社にやりがいを求めること自体は、決して悪いことではありません。しかし、働く意味や手ごたえを、すべて“与えられるもの”として考えてしまうと、かえって苦しくなることもあります。
働くことは、組織との関係性の中で成り立っています。
だからこそ、会社が環境を整えることだけでなく、本人が自分なりの役割を見つけていくことの両方が重なり合うことで、“働きがい”は少しずつ形になっていくのではないでしょうか。
