機能不全家族について理解を深めよう。その定義ともたらす影響について
機能不全家族という言葉を耳にしたことはありますか?
機能不全家族では家庭が本来担うべき機能を果たせず、そこで育つ子どもは多大な影響を受けます。
渦中にある当事者でも機能不全家族であるという自覚が無いことも少なくないため、なかなか支援に結び付きません。以前にブログでご紹介したヤングケアラーやアダルトチルドレンといった問題も機能不全家族が根底にあることが多いといわれています。
このブログでは、そんな機能不全家族をテーマにお届けしています。ぜひ、最後までお読みください。
目次
機能不全家族とは?
機能不全家族とは、通常家庭に存在すべき機能が、健全に機能しない(不全状態)家庭が抱える問題を指しています。
家庭の中でも経済的な自立が難しく、自分の置かれた環境を俯瞰してとらえることの難しい子供が機能不全家族の犠牲を負いやすい立場にあるとされ近年社会的な問題として知られるようになりました。
機能不全家族で育つということ
機能不全家族で育つということは、その後の人生にどんな影響があるのでしょうか。
「親ガチャ」「毒親」などの言葉も見聞きする機会が増えたように、育つ環境で人生が左右されてしまうことへの関心は高まっているのかもしれません。
以前にもヤングケアラーを題材にブログをお届けしたことがありますが、そこで大庭美代子さんのご著書『ヤングケアラーの歩き方 家族グレーゾーンの世界を理解する本』の一節、「ヤングケアラーを生む家庭は「家族機能不全」の状態に陥っており、この家族機能不全がヤングケアラーに与える影響(惹き起こされる特性)がある」といった指摘をご紹介したこともありました。
ここでは、機能不全家族で育った方の実話を基にした映画『あんのこと』をご紹介します。
また、機能不全家族とまではいかずとも両親との関係性に悩み子どもの人生に影を落とすこともあるでしょう。そのような方に向けて、小川糸さんによるエッセイ『針と糸』も併せてご紹介します。
映画『あんのこと』
話題の女優、河合優実さん主演の映画「あんのこと」は、2020年の日本で現実に起きた事件をモチーフに映像化されたものです。
母親と祖母とごみ屋敷同然の家に暮らす主人公の杏は、12歳の頃に母親の紹介で売春をはじめ、16歳で薬物に手を出して心身共に荒れ果てた状態でした。
母親から暴力を振るわれ、家族のために売春を繰り返す日々を送ります。その母はなぜか娘の杏のことを「ママ」と呼び、親の自覚がまるで見えません。
担当刑事の助言で薬物を断つための施設に出入りしたり、介護の仕事をはじめたり、シェルターに住むようになったり、夜間学校で勉強にも励むようになったものの…といったストーリー展開なのですが、苦しいほどに最後まで救われません。
これが実話をもとにされているとは信じたくないほどに残酷です。
生まれ育った環境の劣悪さを本人が自覚するころにはすでに手遅れなことも多く、問題は子の親や祖父母に遡るほどの根深い問題であることも。
目を背けたくなる現実ですが、映画「あんのこと」、ぜひ一度ご覧ください。
小説『針と糸』/小川糸 著
親子の確執に悩む方には小川糸さんのエッセイ『針と糸』のなかの第二章「母のこと」をぜひ読んでみてほしいです。
著者の小川さんは幼いころから実母との関係に悩むことがあり、感情的な母親から暴力を向けられることもあったようです。大人になっても母親に追いかけられる夢にうなされるなど、母親との関係は小川さんに影響の大きいものでした。
そんな母親が余命いくばくかの病に倒れ、最期のときを迎えるまでの間に母に対する心情に変化が生まれます。母の亡きあとはこれまで気づけなかった母親の気持ちに気づいたり、生前よりも存在が色濃く感じられるたりと、心の整理がされていく様が伝わってきます。
本人にとってつらい気持ちをエッセイにつづった背景が次のように述べられていました。これは、機能不全家族に悩む方にとって寄り添ってくれるものになるでしょう。
中には、そういうはっきりとした意思を持ってその親を選んでやって来る子もいるのかもしれない。けれど、少なくとも私は、そうではなかったんじゃないかと思う。
大吉を引いていい親に当たればラッキーだけれど、運悪く凶なんか引いてしまった場合、子供は本当に苦労する。ある程度の年齢に達するまで、子どもは親元を離れられない。
その間に、心や体に大きな傷を負ってしまったら、その子どもは一生、それを背負って生きていかなくてはならなくなるのだ。親が子どもに及ぼす影響というのは、計りしれない。
おわりに
機能不全家族をテーマに、関連する内容に触れられる作品も交えてお届けしました。
機能不全家族に関する諸問題以前に、家族の在り方そのものが多様化しているといった背景もあり、家族の形のスタンダードを追求すること自体がふさわしくない時代かもしれません。
社会的にも、同性パートナーに対する理解が進んでいることや結婚といった形式にとらわれない事実婚の普及、DINKs(ディンクス)として子供を持たない生き方などなど、多様な家族の在り方が知られるようになりました。
また、家族様式の多様化には女性の社会進出に代表される働き方の変化の影響もあることでしょう。
こうして様々な形の家族が生まれる中で、何をもって機能不全とするかは他者からは判断が難しいといった問題もあるかもしれません。
だからこそ身近な子どもの変化に気がつき、手を差し伸べられる存在でありたいものですね。
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