働きながら学ぶ意味とは?―リスキリングが求められる時代に考えたいこと

近年、「リスキリング(学び直し)」という言葉を耳にする機会が増えました。
DXの推進や人手不足への対応、働き方の多様化などを背景に、企業にも個人にも新たな知識やスキルの習得が求められています。
一方で、数年前には「産育休中のリスキリング」に関する政治家の発言が大きな議論を呼んだこともありました。
学び直しは本当に誰にとっても必要なのでしょうか。また、働きながら学ぶことにはどのような意味があるのでしょうか。
今回はリスキリングを巡る議論を振り返りながら考えてみたいと思います。
目次
リスキリングが注目されるようになった背景

リスキリングとは、新しい仕事や業務に対応するために必要な知識やスキルを学び直すことを指します。
近年はAIやデジタル技術の進展によって、仕事の内容そのものが大きく変化しています。
かつては一度身につけた知識や経験だけで長く働くことができた職種でも、現在は継続的な学習が求められる場面が増えています。
また、少子高齢化による人手不足や労働力人口の減少も背景にあります。
企業にとっては、新たな人材を採用するだけでなく、既存の従業員が能力を高めながら活躍し続けることが重要になっています。
当事務所でも以前のブログで、企業が人材育成へ投資する重要性や、活用できる助成金制度についてご紹介しました。
リスキリングという言葉は新しく感じられるかもしれませんが、本質的には「変化に合わせて学び続けること」であり、決して特別な考え方ではありません。
「産育休中のリスキリング」議論が投げかけたもの

数年前、「産育休中のリスキリング」という発言が大きな議論を呼びました。
発言そのものの意図とは別に、多くの人が違和感を覚えた背景には、「育児や出産で精一杯の状況にある人へ、さらに学習を求めるのか」という受け止め方があったように思われます。
実際、育児や介護、治療との両立など、それぞれの事情を抱えながら生活している人にとって、学びの時間を確保することは簡単なことではありません。
その意味では、リスキリングは「誰もが今すぐ取り組むべき義務」ではないでしょう。
一方で、この議論が示したのは、学び直しを個人の努力だけに委ねることの限界でもあります。
働く人に学びを求めるのであれば、学習機会を提供すること/学ぶ時間を確保できる環境を整えること/学んだことを活かせる職場をつくること等といった企業側の取り組みも重要になります。
リスキリングは個人だけの課題ではなく、組織や社会全体で考えるべきテーマなのかもしれません。
働きながら学ぶことにはどんな意味があるのか

リスキリングというと、資格取得や専門知識の習得をイメージする方も多いかもしれません。
しかし、働きながら学ぶ価値は、それだけではありません。
例えば、新しい業務に挑戦するチャンスにつながったり、他部署の仕事を知るきっかけを得たり、マネジメント視点を身につけるといったことも期待できます。
また、働きながら学ぶ最大の特徴は、「学んだことをすぐに実践できる」点にあります。学校で学ぶ知識と違い、仕事の中で得た学びは現場で試し、修正し、再び活用することができます。
そしてその積み重ねが、自分の得意分野や強みを見つけるきっかけになることも少なくありません。
実際、転職や異動、さまざまな業務経験を通じて、「思っていたより向いていた」「やってみたら面白かった」という発見をする人もいます。
キャリアは最初から明確な正解が見えているものではなく、経験と学びを重ねる中で形づくられていく側面があります。
学び続けることは、自分の選択肢を増やすこと
リスキリングという言葉には、どこか「新しいスキルを身につけなければならない」という義務感が伴いがちです。
しかし、本来の学びは競争のためだけにあるものではありません。
新しい知識を得ることによって、今の仕事をより深く理解できるようになったり、別の仕事に挑戦する選択肢が増えるようになったりすることで、将来への不安の軽減や自分の可能性の発見・拡大といった効果も期待できます。
もちろん、人生のあらゆる時期に同じペースで学び続けられるわけではありません。仕事や家庭の状況によって、学びに集中できる時期もあれば、そうでない時期もあるでしょう。
だからこそ大切なのは、「今できる範囲で学び続ける」という視点です。
リスキリングとは、何か大きな資格取得やキャリアチェンジだけを意味するものではありません。変化の大きい時代だからこそ、自分自身の選択肢を少しずつ増やしていくための取り組みとも言えるのではないでしょうか。
働きながら学ぶことは、目の前の仕事のためだけでなく、これからの人生やキャリアをより主体的に選ぶための土台になるのかもしれません。
