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高次脳機能障害ってどんな障害?症状にはいろいろな種類があるってほんと?

高次脳機能障害という障害をご存知ですか?

高次脳機能障害は脳が損傷したことによって機能が損なわれ、本来できていたことができなくなってしまいます。

どんな機能が損なわれるのか(つまりどんな症状がみられるのか)はいくつか種類があり、どれを発症するかは人によって異なります。

高次脳機能障害の当事者による参考書籍もご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

高次脳機能障害が起こる原因とは?

高次脳機能障害は脳の損傷により起こりますが、その原因は主に脳卒中や交通事故等による怪我があります。
脳卒中とは脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称で、それぞれ以下のような病気です。

■脳梗塞
脳の血管の動脈硬化を起こしている部位に血栓ができたり心臓で出来た血栓が脳に到達することによって、脳血管が詰まってしまう状態
■脳出血
加齢や高血圧などによってもろくなってしまった脳の内部にある血管が破れて出血してしまった状態
■くも膜下出血
脳血管にできたた動脈瘤や動静脈奇形が破裂して、脳の表面ある血管から出血した状態
また、そもそも障害がうまれる「高次脳機能」とは何かというと、「言語や行為、知覚、認知、記憶、注意、判断、情動など大脳で営まれる様々な機能」のことを言います。

高次脳機能障害による症状

高次脳機能障害によって起きる症状にはいくつか種類があることは冒頭で述べた通りです。
具体的には次のような症状がみられます。

■脳疲労
・脳を使うことによる疲れが起こりやすくなる
・イライラしやすくなる
■半側空間無視
・視力や視野に問題はないものの、片側のものを認識できなくなる
■失行
・手足は動くものの、着替えなど目的に合わせた動作をとることができなくなる
■失認
・視力や聴力その他感覚などに問題はないものの、知っているはずの人やものを見たり聞いたり触ったりしてもそれが何かわからなくなってしまう
■失語
・言葉を正確に理解することに困難が生じたり、言葉を発することに困難が生じてしまう
■記憶障害
・新しいことを覚えたり、知っていることを思い出すことに困難が生じてしまう
■社会的行動障害
・我慢ができなくなったり意欲が湧かなくなったりするほか、こだわりが強くなったりイライラしやすくなったりする
■遂行機能障害
・段取りを立てて効率良く動いたり、臨機応変な行動がとれなくなる
■注意障害
・集中力が続かない、マルチタスクが困難になってしまう
■病識の低下
・自分の障害を理解できないなど、自らを客観視することに欠ける

失語症について詳しくはこちら

高次脳機能障害による症状のうちの1つである失語症は、過去にブログでも取り上げたことがありました。
当事者の奥様(米谷瑞恵さん)による『こう見えて失語症です』のご紹介も交えながら、失語症について書いた記事です。
失語症について詳しく知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください。

高次脳機能障害の当事者による記録

高次脳機能障害の当事者の記録は多くはないといわれています。
そんな貴重な当事者目線での記録に、鈴木大介さんによる『脳は回復する―高次脳機能障害からの脱出―』(新潮新書)があります。

著者の鈴木大介さんは、病前の著書に、闇金や詐欺などの裏稼業人を相手にした窃盗を生業とする少年らを描いた『家のない少年たち』や、女性の貧困と売春への取材を総括した『最貧困女子』があることからもわかるように、社会的な支援を必要とするにもかかわらずなかなかそこへつながることができずにいる対象者を取材相手とした文筆家でした。

鈴木さんが出会ってきた多くの取材対象者は、発達障害や精神障害を持つ者が少なくなく、感情コントロールができないなどの課題を抱えた方が多かったようです。
そこへ突如、自分の身に脳梗塞を起因とした高次脳機能障害が降りかかってきて、種類は違えど取材対象者と同じく支援が必要な立場となることで、彼らへの理解の解像度が増すといった体験をされます。
そのきっかけは、自分が抱える高次脳機能障害も、取材対象者たちの抱える発達障害や精神障害も同じく「脳が壊れた状態」なのではないかと思い至ったことでした。
脳が壊れた状態と表現してしまうと深刻な感じがするため、これをあえて陳腐化させるために「脳コワ」と名付け(鈴木さんの奥様による命名)、かつての取材対象者と自分の共通点を見出しながら、自分の高次脳機能障害の分析をつづった内容は鈴木さんだからことの視点だと感じました。

また、冒頭でも述べたように高次脳機能障害の当事者研究は十分ではないといわれています。鈴木さんも自身の闘病・リハビリ経験から、当事者感覚が社会はもちろん医療従事者や研究者など高次脳機能障害と近い存在の人にも的確に伝わっていないと感じられ、だからこそ赤裸々にご自身の体験を書籍といった形で残しているのだと伝わる内容でした。

本書の終盤では、当事者だから綴ることのできる高次脳機能障害への向き合い方や、家族等の介助者の心がけが語られており、とても説得力があり参考になりました。
例えば、高次脳機能障害への向き合い方として、まずは「受容」がとても需要であることが語られています。また、大切なのは諦めを伴う受容ではなく、「障害を認識してみつめ、理解することで、周囲の環境調整に工夫を施し、障害の苦しさを和らげる」受容だと触れられています。
受容が不十分なまま、自分の障害への理解から目を背けて病前通りの自分を追い求めてしまうと、失敗体験が重ねられた結果、うつ病などの「二次障害」を招きかねないと指摘されており、実際に高次脳機能障害を招く脳梗塞発症後の生存者の自殺率は高いといったデータもあるようです。

そして本書内でハッとさせられたのが「僕自身が脳梗塞を起こしたように、誰もが高齢者になれば高次脳機能が衰えるように、加齢でも事故でも病気でもストレスでも、脳が壊れるというのは誰にでも起きうる、日常と隣り合わせのことなのだ」といった記述でした。
高次脳機能障害に限らず、広い意味での「脳コワ」さん当事者やその周囲の方々にとってとても参考になる1冊です。ぜひ、読んでみてはいかがでしょうか。

おわりに

高次脳機能障害についてご紹介しましたがいかがでしたか?
ひとくちに高次脳機能障害といってもこの障害によっておこる症状が様々であることを理解することが大切です。
そういった障害の特性のため、症状によって伴う困難の種類も異なってきます。家族や身近な人が高次脳機能障害になったときは、その人が必要とする支援ができるよう具体的に起きている症状を理解することから始めましょう。

このブログでは、週に1度のペースで情報を発信しています。今回のように特定の障害について取り上げることもありますが、そういった障害や病気の紹介の他にも、多くの方にご覧いただけるよう幅広いテーマを取り扱っています。

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