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療育とは?その目的や大切さについて。療育手帳についてもご紹介

療育という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。

でも具体的にどんな内容のものなのかについては、当事者や家族、あるいは支援者として従事している人でないと詳しくないのではないでしょうか。

同様に療育手帳についても聞いたことはあるけれど、どういった事情で交付されるものなのかについては知らないといった人も少なくないと思います。

このブログでは、そんな知っているようで知らない療育をテーマにお届けします。

ぜひ、最後までご覧いただけると嬉しいです。

目次

療育ってなんだろう?

療育という言葉の定義について、厚生労働省が公表している資料『第3回障害児支援の在り方に関する検討会』では以下のように触れられています。(なお資料の作成者は全国児童発達支援協議会の記載がある)

「療育」「児童発達支援」などの概念をどのように捉えるか

ほぼ同じ意味として使用されているが、障害者基本法にも使用されている「療育」は「肢体不自由児への社会的自立に向けたチームアプローチ」という概念として誕生し、現在では知的障害のための手帳にも使用されるなど、その概念は曖昧になってきている。
また、障害が確定した子ども達への支援に限定される感が強い。

我々は、平成 15・16 年に実施した厚生労働科学研究「障害児通園施設の機能統合に関する研究」において、「療育」の概念をさらに発展、拡大させて「発達支援」を提起した。

我々が考える「発達支援」とは、障害が確定した子どもへの「障害改善への努力」だけでなく、発達が気になる程度の段階の子どもなども対象として、発達・成育の基盤となる親・家族への支援や保育所等などの地域機関への支援も視野に入れる広い概念であり、「障害のある子ども(またはその可能性のある子ども)が地域で育つ時に生じるさまざまな問題を解決していく努力のすべてで、子どもの自尊心や主体性を育てながら発達上の課題を達成させていくこと(狭義の発達支援)、障害のある子どもの育児や発達の基盤である家庭生活への支援(家族支援)、地域での健やかな育ちと成人期の豊かな生活を保障できる地域の変革(地域支援)を包含した概念」と定義した。

上に引用した文章にもあるように、療育の解釈は時代とともに変化しています。
療育は一般的に、3障害(身体障害、知的障害、発達障害を含む精神障害)のいずれかを抱える児童(18歳以下)が対象とされています。
療育を受けるにあたっては後述する療育手帳等の各種手帳の保有は必ずしも絶対条件ではなく、保有していなくても受けられることもあります。

療育ではどんなことをするのか

療育の内容については一律的なものではなく、それぞれの児童に合わせて必要な療育が行われますが、「個人療育」と「集団療育」に大別することができます。
名称からもわかるように、個人療育はマンツーマンで行われ、集団療育は数人のグループや団体の中で行われます。
マンツーマンだからこそできること、複数人の中だからこそできることがあるため、個人療育と集団療育のそれぞれにメリットがあると言えます。

療育の大切さとは

療育の効果というと語弊があるので“療育の大切さ”と表現しますが、療育によってどういった影響があり、どういった良い変化が期待できるのでしょうか。
厚生労働省の『児童発達支援ガイドライン』でも触れられている通り、療育(児童発達支援)は“障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助”です。
これは社労士として業務に携わる中でも実感するのですが、知的障害を抱えるお子さんの保護者からは「自分たちがいなくなった後に少しでも自立した生活が送れるようになってほしい」といったお気持ちが語られることが多くあります。
自立には経済的な意味も含まれ、そこには障害年金なども役立てることができますが、まず第一に社会性としての自立を望んでおられると感じます。
障害の程度によってできること・できないことはもちろん異なりますが、本人なりのできることを見つけていく・増やしていくことが療育の目的とするところだと言えるでしょう。
その意味でも、療育を通じて可能性を広げていく機会に多く触れることが“療育の大切さ”なのだと思います。

映画『こちらあみ子』

ここでは、今村夏子さんの同名小説が原作の映画こちらあみ子をご紹介します。




はじめに断りを入れておきますが、同作では主人公(あみ子)に明確な診断が下っているわけではなく、「変わっている子」「手がかかる子」といった描かれ方をしています。
明確に示されていないながらも、あみ子のふるまいには発達障害の特性がみてとれることから、この映画は発達障害本人とその周囲を描いた作品との見られ方がされています。

実際に私も見ましたが、考えさせられることの多い作品でした。
あみ子なりに考えがありとった行動でも周囲にとっては突拍子もない行動として映り、誤解され、時には無自覚に傷つけてしまうこともあります。
同級生には内面の成長がみられる中で、あみ子はいつまでも幼い描写だったのも印象的でした。
家族を含むあみ子の周囲の人間は、あみ子が物事を理解することに諦めの姿勢なのですが、あみ子が「なんで誰も教えてくれんかったんじゃろう」「いっつもあみ子にひみつにするね」とつぶやくシーンは胸が締め付けられる思いがしました。

この作品を観た多くの人が抱く感想の通り、あみ子の強烈な個性が発達障害の特性によるもので、それによって周囲の人間との距離感が生まれているのだとしたら、また、適切な療育を受ける機会に恵まれずにそうなってしまっているのだとしたら…と考えるとなんとも言えない気持ちになります。

何にでも診断名がついてしまう時代なんて揶揄されたりもしますが、適切な診断と対処で生きづらさを軽減できるケースもあるのも確かだと思います。
生きづらさの感じ方も人それぞれですし、周囲が感じているほどに本人は生きづらさを感じていないケースもあります。
デリケートなこととして周囲からの助言もはばかられ、医療へのつながりを持つべきかどうかの見極めが難しいといった実態もあるかと思います。

『こちらあみ子』を療育をテーマとする本ブログで取り上げるのは短絡的かとも躊躇しましたが、ただ本作は周囲から浮いてしまっている本人の目線と、周りの人間の目線が上手く織り交ぜられていて多くの気づきがある作品だと感じました。
興味がある方はぜひご覧になってみてください。

療育手帳とは

療育手帳は、上述した療育対象(3障害(身体障害、知的障害、発達障害を含む精神障害)のいずれかを抱える18歳以下児童)よりさらに範囲が狭まり、知的障害(知的発達症)のある方に対して交付されます。
また、地域によって療育手帳の呼称は異なり、例えば東京都では「愛の手帳」と呼ばれています。
厚生労働省HPにも記載されているように、療育手帳は他の手帳(身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳)と併せて「障害者手帳」と総称されるものです。
療育手帳では、知能指数(IQ)と生活の困難さから判定された等級が記されており、その等級は自治体によって若干の違いがあります。
参考までに、 兵庫県(西宮市)における療育手帳の等級はA(重度)・B1(中度)・B2(軽度)の3段階とされています。

療育手帳と障害年金

過去ブログでも触れたことがあるのですが、(身体・精神)障害者手帳がないと障害年金の申請(請求)ができないと誤解されているケースがあります。
(身体・精神)障害者手帳と同様に、療育手帳の保有有無も障害年金を申請するうえでの必須条件ではありません。
逆に言えば、障害者手帳や療育手帳を持っていれば障害年金を必ず受給できるといったものでもなく、障害年金には障害年金の受給要件があります。

おわりに

療育をテーマに、療育手帳や障害年金についても触れてご紹介しました。
過去にも発達障害を題材に含めたブログをいくつか書いているので、よければ併せてご覧ください。

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