ボーナスに関するあれこれ。賞与支払届やボーナスに関する判例など
ボーナスというと、日本では夏と冬の支給が一般的です。
夏のボーナスは6月下旬から7月上旬に支給されることが多いことから、ボーナスへの期待や関心が高まる時期でしたよね。
テレビや新聞でもボーナスに関する話題が取り上げられていましたが、なんだか増額傾向だとか?!
今回のブログではボーナス(賞与)をテーマに、今年の夏のボーナスの傾向やその使い道、そして会社として必要な届出についてまとめています。
また、ボーナスは給与と異なり企業ごとに支給有無を決められるといった性質から、揉め事が起きやすい側面があります。
ボーナス関連の判例についても触れているので、参考としていただけると幸いです。
目次
- ○ ボーナス増額?!今年の夏の賞与に関する傾向とは
- ・企業は賞与支払届の提出をお忘れなく!
- ○ ボーナスで揉め事?!判例から見る注意点
- ・大和銀行事件 (S57.10.07最一小判)
- ○ ボーナスに関する決まりは就業規則への明記が必須
- ○ おわりに
ボーナス増額?!今年の夏の賞与に関する傾向とは
ボーナスは景気をはかる指標のひとつともいえるからか、夏や冬のボーナスの時期になると毎度新聞やテレビニュースでも取り上げられますよね。
日本経済新聞にて「夏ボーナス3年連続最高 中小伸び率7.8%、大手上回る」の見出しで夏の賞与に関する話題が取り上げられており、以下3点に着目されていました。
①夏ボーナス、全産業の平均支給額は3.72%増
②繊維やゴムなど7業種は前年比2ケタの伸び
③中小は人材確保への危機感から賞与底上げか
また、NHKでは「大手企業の夏のボーナスは4%余増 平均98万3112円で過去最高に」とも取り上げられており、大手企業のことし夏のボーナスは、従業員1人当たりの平均が98万3112円と、去年より4%余り増加し、今の方法で調査を始めた1981年以降で最も高くなったと報じられています。
とはいえあくまで傾向ですから、毎度賞与の時期のテレビニュースでは、街頭インタビューで喜びの声が取り上げられる一方、嘆きの声も見られますよね。
これらのニュースを踏まえて、ご自身や周囲の実感としてはいかがでしょうか?
また、気になるのが皆さんのボーナスの使い道。
様々な団体がアンケートを取っているようですが、いずれも使い道1位は「貯蓄」のようです。
そのあとに続くものにも生活費の補填が上位で、ボーナスが入ったしパーッと使ってしまおうというよりは堅実に蓄える傾向にあるようです。
その他、旅行といった使い道も人気がありますが、円安の影響もあって国内旅行を選択する傾向が強いようですね。
企業は賞与支払届の提出をお忘れなく!
ボーナスから社会保険料が引かれていてガッカリ…といった方もおられるかもしれませんね。
でもこれは会社が勝手に行っていることではなく、社会保険加入者はボーナスからも保険料を控除する決まりがあるため行われていることです。
社会保険料が控除されたということは、会社には納付義務があるということになります。
そのため、ボーナスを支給された従業員が社会保険加入者だった場合、会社側は賞与支払届を提出する必要があります。(日本年金機構のHPにも従業員に賞与を支給したときの手続きとして案内があります)
賞与支払届は賞与支給日から5日以内に提出する必要があるので、忘れないように注意しましょう。
ボーナスで揉め事?!判例から見る注意点
ボーナスは、冒頭でも述べたように会社独自で支給有無を定めることが出来ます。そのため、給与と異なり必ず支給しなければならないものでもなく、そもそもボーナス支給がない会社もあります。
ただし、ボーナス(賞与)の支給を明示していたにもかかわらず正当な理由なく支給されないとなると、それは問題です。
そこで、この章ではボーナスに関する判例をご紹介します。判例から学び、揉め事が起こらないようにしたいものですね。
労働条件に関する総合情報サイトに掲載の裁判例を確認してみましょう。
大和銀行事件 (S57.10.07最一小判)
【事案の概要】
(1) Y銀行は、旧就業規則32条で「賞与は決算期毎の業績により各決算期につき1回支給する」と定め、慣行として支給日に在籍する者に対してのみ賞与を支給してきたが、労働組合からの申し入れを受け、昭和54年5月1日より就業規則32条を「賞与は決算期毎の業績により支給日に在籍している者に対し各決算期につき1回支給する」と改定し、同年4月下旬には従業員への周知徹底を図った。同年5月31日に退職し、支給日に在籍していなかったため賞与の支給を受けることができなかったXは、Y銀行に対して賞与の支払いを求めて提訴したもの。
(2) 大阪地裁、大阪高裁ともに、Yを退職した後のXの賞与については、支給日に在籍していなかったので、受給権を有しないとし、最高裁もこれを維持し、上告を棄却した。
【判示の骨子】
Y銀行においては、本件就業規則32条の改訂前から支給日に在籍している者に対してのみ決算期間を対象とする賞与が支給されるという慣行が存在し、就業規則32条の改訂は単にY銀行の労働組合の要請によって慣行を明文化したものであって、その内容においても合理性を有する。
右事実関係のもとにおいては、Xは、Y銀行を退職した後を支給日とする賞与については受給権を有しない。
ボーナスに関する決まりは就業規則への明記が必須
ボーナスはいつ支給されるのか、どういった基準で額が決まるのか…従業員にとってはとても気になることですよね。
そんな方はぜひ就業規則に目を通してみましょう。というのも、実はボーナスに関する決まりも就業規則で定めておく必要があるのです。
就業規則は会社のルールブックのようなものですが、絶対に書かないといけないこと(絶対的必要記載事項)と、決まりがあるのであれば書かないといけないこと(相対的必要記載事項)とがあり、賞与はこのうち「相対的必要記載事項」とされている「臨時の賃金」に該当します。
また、就業規則で賞与について記載する際には、支給対象時期・賞与の算定基準・査定期間・支払方法等を明確にしておくことが必要です。
就業規則にて、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。
ではここであらためて、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項についても確認しておきましょう。
■労働時間に関する事項
(1)始業・終業の時刻
(2)休憩時間(長さおよび与え方)
(3)休日(日数および与え方)
(4)休暇(代替休暇、年次有給休暇、産前産後の休暇など)
(5)交代制労働における就業時転換に関する事項(交替の期日、交替の順序など)
■賃金関係に関する事項
(1)賃金(臨時の賃金等を除く)の決定・計算方法
(2)賃金の支払方法
(3)賃金の締切・支払の時期
(4)昇給に関する事項
■退職に関する事項(解雇の事由を含む)
■賃金に関する事項
(1)退職手当に関する事項
(2)臨時の賃金等(退職手当を除く)及び最低賃金額に関する事項
■その他
(1)労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項
(2)安全・衛生に関する事項
(3)職業訓練に関する事項
(4)災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
(5)表彰・制裁の種類及び程度に関する事項
(6)その他当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
おわりに
ボーナス支給シーズンだったので、今回のブログではボーナスをテーマに取り上げてみました。
こういった話題の他にも、障害年金をメインメニューに扱う社労士事務所らしく、病気や障害に関するテーマを扱ったりもしています。
ブログ記事を目にしたことをきっかけに関連書籍を知り、さらにご自身で情報収集する機会になれば…との思いから、参考書籍をご案内している記事も多くあります。
興味がありそうなテーマがあれば、ぜひ過去ブログもご覧になってみてくださいね。
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失語症について理解を深めてもらうことを目的にまとめたブログでご紹介した書籍です。
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ためこみ症をメインテーマに、みんなが知っている偉人も生きづらさを抱えていたことが知れる本としてブログ中でご紹介しました。