優秀な人ほどルーティンを作る理由~決定疲れと仕事のパフォーマンス~

「できる人ほど毎日同じ服を着る」「朝の行動パターンが決まっている」といった話を聞いたことはないでしょうか。
一見すると自由度が少なく不便にも思えますが、実はそこには脳の負担を減らす合理的な理由があります。その鍵となるのが「決定疲れ(Decision Fatigue)」です。人は日々の選択を重ねるたびに認知的なエネルギーを消耗すると言われています。
本記事では、決定疲れの仕組みを紹介しながら、なぜ優秀な人ほどルーティンを活用するのか、そして仕事のパフォーマンスとの関係について考えてみたいと思います。
目次
私たちは思っている以上に「決めている」

朝起きてから家を出るまでを振り返るだけでも、
着るもの、食べるもの(そもそも食べるのかどうか)、何時に出発してどの交通手段を使うか…等、自分が「判断している」と自覚していなくても、実際は多くの判断を行っています。
仕事となればさらに判断の頻度は増し、私たちは日常的に膨大な数の選択を繰り返しています。
そして、その一つひとつは小さな判断であっても脳にとっては負荷となり、意思決定を重ねることで集中力や判断力が徐々に低下していく現象を「決定疲れ(Decision Fatigue)」と呼びます。
夕方になると重要な判断を先送りしたくなったり、いつもならしないようなミスをしてしまった経験はありませんか?それらのミスの発生要因の1つに、決定疲れによる影響が考えられるかもしれません。
なぜ優秀な人ほどルーティンを作るのか
経営者やアスリート、クリエイターなどの中には、毎日の行動をある程度パターン化している人が少なくありません。例えば、服装を固定化したり朝のスケジュールをパターン化させる例はあなたも見聞きしたことがあるかもしれません。
服装や行動をパターン化することは一見すると単調にも見えますが、そこには合理的な理由があります。
それは、「重要ではない判断に脳のエネルギーを使わないため」です。
人間の判断力には限りがあるにもかかわらず朝から細かな選択を繰り返していると、本当に考えるべき場面で十分な集中力を発揮できなくなる可能性があります。
そのため、あらかじめ決められることは決めておき、意思決定の回数そのものを減らしているのです。
その意味では、ルーティンは単なる習慣ではなく、限られた認知資源を重要な判断のために温存する工夫とも言えるでしょう。
働き方改革を経た現代だからこそ増える「決める負担」

近年は働き方改革やテレワークの普及により、従業員一人ひとりの裁量が大きくなっています。
かつては上司の指示に従って進める場面が多かった仕事も、現在では自分で考え、自分で判断する機会が増えています。これは主体性を発揮しやすくなる一方で、「決める負担」が増えることも意味します。
仕事の進行や業務の優先順位など、選択の自由度が高まるのと比例して選択機会が増え、脳への負担も大きくなります。
実際、「忙しいわけではないのに疲れる」という感覚の背景には、業務量そのものよりも意思決定の多さが影響している場合もあります。
働き方の自由度が高まった現代だからこそ、自分自身で判断の回数をコントロールする視点が重要になっているのかもしれません。
そこで意識したいのが、仕事のパフォーマンスを支えるための「仕組み」です。
私たちは仕事の成果を考える時、「能力」や「やる気」に注目しがちですが、同じくらい「仕組みを整える」ことも効率的に仕事をするのには大切な視点です。
小さなことでいえば、メール確認の時間を決めたり、朝一番に取り組む業務を固定する等の工夫は、判断の回数を減らし、脳の負担を軽減する効果があります。
これは個人だけでなく組織にも当てはまります。
例えばルールや手順が曖昧な職場では、その都度判断が必要になり、結果として従業員の負担が増えますが、逆に、一定のルーティンや業務フローが整備されている職場では、本当に考えるべき場面に集中しやすくなるでしょう。
優秀な人が成果を出しているように見える背景には、能力だけでなく、判断疲れを防ぐ仕組みづくりがあるのかもしれません。
おわりに

私たちは日々、多くの選択をしながら生活しています。そして、その選択は思っている以上に脳のエネルギーを消耗しています。
優秀な人ほどルーティンを大切にするのは決して変化を嫌っているからではなく、本当に重要な判断に集中するためにあえて判断しなくてよい部分を増やしているのです。
働き方の自由度が高まる現代だからこそ、何でも自分で決めることが正解とは限りません。
この考え方は弊社の主力サービスでもある就労支援の現場でも参考になります。
例えば、発達障害のある方の中には、多くの選択肢を提示されることで負担が大きくなる人がいたり、精神的な不調を抱えている場合には判断そのものに大きなエネルギーを必要とすることがあるなど、「何でも自由に選べる」ことが必ずしも良い結果につながるとは限りません。
考えるべきことに力を注ぐことができるよう、仕組化して決めなくてよいことを増やすことが、仕事のパフォーマンスを高める近道なのかもしれません。
